子供の心を持ち続けたピカソだけが描いた「走る」絵
「廊下を走るな!」 「階段を走っちゃダメ!」
小学生の頃は、誰もがよく先生に叱られた。 いや、中学生になってからも、まだ校内を走って叱られた人は多いだろう。
子供の頃は、とにかくよく走ったものだ。が、歳を重ねて大人になるにつけて、誰も走らなくなる。 いったい何故?
子供の頃は,授業が終わって運動場へ出るときも、運動場で鬼ごっこを始めるときも、友達とたわいなくふざけあったりしたときも、とにかく楽しさを感じて走り出したものだ。
が、歳を重ねるにつれて,誰も走らなくなる。 バスや電車に乗り遅れそうになったり、待ち合わせ時間に遅れそうになったり、健康や減量のためにジョギングをしたり……、大人になると何か目的や理由がないと走らなくなるのだ。
子供時代に充溢していた遊び心が大人になると消えるのか? 有名な画家は誰もが大人だから、「ただ楽しく走る姿」を描いた名画は見当たらない。
古代ギリシアの壺絵やギリシア神話の足の速い女神(アタランテ)の絵は、競走している姿だし、何かに追われて走る姿など、「理由のある走る姿」ばかり。
そんななかで唯一の大名作がピカソの『浜辺を走る二人の女』だ。 薄着姿の豊満な肉体の女性たちが、豊かな乳房や太い太股を惜しげもなく露わにして、青空の下、手を取り合い、大きく足を踏み出し、喜びに溢れ、意味なく力強く走っている。
見る人の心も清々しく高ぶるピカソ41歳の大傑作だ。きっとピカソは,大人になっても子供の頃の「遊び心」を失わなかったに違いない。
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