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先月号の本欄で、ジャーナリストの木村元彦氏が上梓された『労組日本プロ野球選手会をつくった男たち』(集英社インターナショナル)を取りあげ、プロ野球選手たちが、かつては経営者側(球団)の自分勝手な主張に抑えられ、いかに権利を奪われ続けていたか、そして選手たちが労働組合を組織し、当然得るべき権利の獲得のために戦い続けてきたか、ということを紹介した。
その労働組合プロ野球選手会が、2025年12月9日、1985年の結成以来40周年を記念し、東京プリンスホテルでパーティを開き、小生も出席した。
労組創設時に最も尽力した中畑清氏(元巨人・元横浜監督)は所用で出席できず、長いビデオ・メッセージで今後もプロ野球労組の発展の必要性を訴えた。
歴代選手会長(労組委員長)のなかでは、岡田彰布(第3代)、尾花高夫(第4代)、古田敦也(第5代)、宮本慎也(第6代)、新井貴浩(第7代)、嶋基宏(第8代)、炭谷銀仁朗(第9代)、會澤翼(第10代)の各氏が出席。
FA制度導入時の苦労話や、WBCやオールスター戦の出場報酬を勝ち取るための苦労話などが披露された。
そんななかで今後のプロ野球界にとって、非常に重要と思える指摘がいくつかあった。
一つは、育成選手制度のあり方。たしかに選手を育てるという当初の目的通り、育成選手として入団した選手が一軍選手まで育った例もある。が、他球団に奪われるぐらいなら、安い年俸で獲得しておこうとする球団もあり、「3軍や4軍まで持ってる球団もあるけど、そんなに必要はないはず」(岡田氏)「その結果、最近の社会人野球のレベル低下が甚だしい」(宮本氏)という声も出た。
また、すべての歴代委員長が声を揃えて口にしたのが、労働組合に加入する選手が、最近減ってきたことだ。労組は任意加盟のため、「入る/入らない」はもちろん選手の自由。そこで、今年メジャーのドジャースで活躍した佐々木朗希投手も、選手会労組には入っていなかったという。
海外FA制度や、ポスティング制度の整備などは、プロ野球労組が経営者側(球団)との交渉の末に、労組が勝ち取った権利。最低年俸制度や待遇の改善、オールスター戦とWBCのギャランティなど、労組が努力して勝ち取った権利は少なくない。
が、労組に加入せず権利の恩恵だけを利用する選手の増えてきたことに、歴代委員長は誰もが嘆き、怒りの声をあげたのは当然だろう。
木村元彦氏も指摘したが、メジャーの労働組合の委員長は、すべて弁護士などの交渉事を本職とする人物が就任し、選手の声を代行する形で発展してきた。
が、日本プロ野球選手会労働組合の歴代委員長はすべて選手自身が就務めている。前出の會澤翼委員長を次いで第十代委員長には福岡ソフトバンク・ホークスの近藤健介選手、副会長には源田壮亮(西武)、松本哲也(巨人)両選手の就任も決まった。
これは本当に素晴らしいことで、選手主導の労組が「50周年、60周年と、ますます発展してほしい」(岡田元委員長)。
できれば球団が一企業の所有物から脱却し、サッカーJリーグのサッカー・チームのように球団が「株式会社野球チーム」として独立し、企業はオーナー(所有者)として存在するのではなく、野球チームのスポンサー(援助者)の存在になってほしいものだ。それが「公共の文化(公共財)」としてのスポーツ本来のあり方のはずだから。
もうひとつプロ野球労組40周年記念パーティの2日前(日本時間12月6日午前3時から)アメリカの首都ワシントンで行われた来年のサッカー・ワールドカップ北中米大会の抽選会についても触れておきたい。
アメリカ流エンタメ化とでも言えば良いのか、歌あり、映像あり、有名人へのインタヴューありで、なかなか本番の出場国の組み合わせ抽選が始まらなかったことにはウンザリさせられたが、なかでも最悪の出来事として驚いたのは、トランプ大統領に「第1回FIFA(国際サッカー連盟)平和賞」が授与されたこと。
これにはイギリスの人権団体フェア・スクエアが、「現職の政治指導者への賞の授与は、FIFAの中立義務に対する明らかな違反行為」として抗議。アメリカでもCNNテレビが、「FIFAがトランプを喜ばせるために賞を作った」というコメンテイターの意見を放送。
「トランプは、贈り物を受け取ったり与えたりする王様のような世界を望んでいる」そこに付け込んだFIFAだが、そのコメンテイターは、「我々の大統領が子供扱いされているのは屈辱的」で「大統領の政策の見返りとしてオモチャを渡される状態」を嘆いたという。
世界でも批判の声が高かった「FIFA平和賞」は、FIFAのインファンティーノ会長が独断で決めたらしく、彼は自らのインスタグラムに、10月の時点で早くも「トランプ大統領こそノーベル平和賞に相応しい」と書き込んでいたという(BBCジャパンより)。
それがトランプ大統領からW杯への多大な支持を得るためのインファンティーノ会長の戦略だったとしても(多大な支持を得たからと言って、W杯がさらに素晴らしい大会になるとも思えないが)、賛成派と反対派にアメリカを分断し、さらに世界をも分断している人物の意見を支持する立場を取ったFIFAが、自らの価値を貶めたことだけは確かだ。
さらに今回のW杯北中米大会は、入場券の転売を全面的に許可したため、投資目的で購入した人(サッカーの試合を見る気のない人)の転売が早くも始まり、百万円を超す入場券の驚くべき値上がりが始まっているという。
我々日本のサッカー・ファンは、インファンティーノ会長の政治的振る舞いや、カネの亡者と化しているFIFAの行為など無視して、まずは初戦のオランダ戦を、そして続く2戦目のチュニジア戦を、そして3戦目のポーランド・スウェーデン・ウクライナとの試合をテレビで応援すればいいのでしょうね。
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