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拙著『定本・長嶋茂雄』文春文庫 井上ひさし・赤瀬川源平&隼・清水義範・大島渚・小田島雄志・落合博満・橋本治・荒俣宏・草野進・星野仙一・糸井重里…等、豪華執筆陣です!
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4月1日(火)
ベッドの読書は筑摩書房のPR誌『ちくま』4月号。斎藤美奈子さんの連載〈世の中ラボ179回〉は『コロナ後「コロナ小説」は変わったか』で紹介されてる古川日出男『京都という劇場でパンデミックというオペラを観る』(河出書房新社)は帯に「おいでやす地獄へ」「奇想天外で壮大な「人類史オペラ小説」が開幕する!」とあり書評子も《作者の実体験らしきノンフィクションと冥官・小野篁を主役とするフィクションが融合。コロナに関する事実関係は子細かつ正確で記録的価値もあり》と書いている。是非とも読みたくなった!他にヨシタケシンスケ氏の『ヨイヨワネ』刊行記念インタヴュー『しんどさから自分を救うためのスケッチ集』も面白くちくま文庫の『ヨイヨワネ』の『あおむけ編』も『うつぶせ編』も読みたくなった。ヨイヨワネとは「良い弱音」のこと。弱音は悪いことなかりじゃないのですね。交通ジャーナリストの椎橋俊之氏が自著『ドキュメント北海道路線バス』(筑摩選書)の自薦コラムの冒頭にこんなことを書かれていた。《NBA(全米バスケットボール協会)の中継を見ていて気がつくことがある。ゲーム後にヒーローインタビューをする記者(若い女性が多い)の質問がツボを心得ていることだ(略)十年一日「勝った感想はどうですか」しか聞く能のない日本のメディアとは雲泥の差》最近のサッカーの試合後インタビューは結構イイ質問をしているからコノ指摘はプロ野球のヒーローインタビューを指していると思われますね。ならば同感。最悪のインタビューは「あの得点のシーンを振り返って下さい」というヤツですね。ワン。
4月1日(火)つづき
ベッドを出て今日も氷雨のなか黒兵衛と散歩。寒い。風も強い。花ニ嵐ノタトエモアルサ。サヨナラダケガ人生ダ。井伏鱒二の漢詩訳ですね。ワン。終日デスクワーク。昨日文藝春秋社から『Number』と巨人がコラボしたムック本『読売巨人軍90周年+NEXT「伝説のナイン・ストーリーズ」』が送られてくる。小生の長嶋茂雄さんに対するインタビュー記事『僕はアウトロー的なプレイヤーだった』(拙著『定本長嶋茂雄』文春文庫にも収録)がトップ記事になっているのであまり批判はしたくないけど『Nhmber』には雑誌ジャーナリズムとしてのスポーツジャーナリズムも期待したいですね。そーゆーコトを期待して現在のマスメディアに満足してない方は小生の長嶋茂雄氏に対するインタビューを読むと同時に是非ともYouTube『TAMAKIのスポーツジャーナリズム』を御覧下さい。歴史家の井沢元彦氏との対談その他のスポーツに関する話題…面白いですよ!あ。今の発言…April foolとは無関係でマジですからね(笑)

DVD |
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『破戒』 島崎藤村原作の被差別部落をテーマにした市川崑監督市川雷蔵主演の映画。見事な作妃です
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4月2日(水)
『20世紀にっぽん人の記憶』読み進む。「満州」「二・二六事件」「贅沢は敵だ」「真珠湾攻撃」「赤紙」「勤労動員」「本土爆撃」…どれも庶民の生の声が興味深かったが野坂昭如氏の寄稿文「本土爆撃・サイレン断続の不気味」もオモシロかった。爆撃による被害の欧州と日本の違いを書いている。イギリス・ドイツの被害は死体は《黒焦げじゃなく生。負傷者は手足もぎとられ血まみれ。(略)わが方はただ「焼跡」でいい。(略)戦後日本では焼跡にたちまち復興の槌音高く響かせ「新生日本」を謳い得た。イギリス・ドイツは違う。まず瓦礫の後片付け。放置された死体がいくらも出てくる。何が誰がこの状態をもたらしたのか。三つ子だって考える。戦争に至った検証や責任追及。補償が良く実施されているドイツと日本のうやむや戦後処理の差はここにも胚胎する》《焼き尽くされてしまえば完了。一面何もない風景はアッケラカンとしたものだった。家族を失い孜々(しし)として築いた家屋敷財宝いっさい空漠。悲惨な体験に違いないが被害者は空襲を一過性の天災と受け止めた》文学者の眼と感性は少数派かもしれないが確かに真理を穿ってますね。ワン。黒兵衛の散歩は後回し。ベッドを出てRKB毎日放送『田畑竜介GrooonUp』の『Catch Up』にZOOM音声出演。今日のテーマはメジャーのヤンキースで流行している「トルピード(魚雷)型バット」について。先が少し細くなってるバットでヤンキースはホームラン量産らしいのでいろんなバットの話をする。大下弘の青バット。川上哲治の赤バット。藤浦富美男の物干し竿。新庄剛志の金色バット&虹色バット。福本豊・若松のツチノコバット・すりこぎバット…などなど。大谷選手がバットを85.1pから87.6pさらに89pと長いバットに変えているらしいけど藤村の物干し竿は93.98pだったとか。ま。プロならオモロイことをやってほしいですね。
4月2日(水)つづき
NHK-BSの昼の映画でジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの『最高の人生の見つけ方』をやってましたね。これはホントにイイ映画ですね。2人の名優の会話(台詞)だけでも面白いですね。いろいろ書き下ろしの仕事のあと晩メシは島崎藤村・原作の映画『破戒』を見ながら。中3の孫が何故かその小説を読んでると電話で言ったので市川崑監督の映画のDVDを送ってやろうと思って見直す。市川雷蔵・三國連太郎・船越英二・岸田今日子・藤村志保・杉村春子・長門裕之・中村鴈治郎…の演技も素晴らしいが和田夏十さんの脚本が見事ですね。孫が文藝路線の読書に走ってるなら『炎上(金閣寺)』『吾輩は猫である』『こころ』『ビルマの竪琴』の市川崑作品のDVDも送ってやろうかな?『野火』と『鍵』はまだ早いかな?

DVD |
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『黒い雨』 ブラック・レイン(黒い雨)なら断然今村昌平監督のこちらを見てほしいです
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4月3日(木)
『20世紀にっぽん人の記憶』は「玉音放送」「進駐軍」「闇市」「教育改革」「東京裁判」「力道山」「もはや戦後ではない」と読み進む。当時のアンケート「日本の進むべき道」で最も多かった回答は「小さくても心豊かで他国から尊敬される国」で44%。「経済大国」は7%しかなかった。ワン。春雨のなか黒兵衛と散歩。春雨が鬱陶しく感じられないのは桜が咲いているから?ワン。終日書き下ろし原稿の整理。晩メシは映画『ブラック・レイン』を見ながら。3度目くらいかな?同じタイトルの映画なら今村昌平の『黒い雨』を見るべきでリドリー・スコット監督の映像は面白くてもストーリーや台詞はイマイチ。内容は単なるハリウッド・アックション映画ですね。歴史家の井沢元彦さんをゲストに迎えての『TAMAKIのスポーツジャーナリズム』「スポーツを歴史から考えよう!」は3回ともアップされました。「スポーツは民主主義からしか生まれ逢い」「日本スポーツの過去・現在・未来」」「オリンピックとは何か?!」是非御覧下さい。また井沢元彦さんの『逆説チャンネル』にもゲスト出演してスポーツのことを喋っていますのでヨロシク!

4月4日(金)
『20世紀にっぽん人の記憶』は「即席ラーメン」「60年安保」「紅白歌合戦」「海外旅行自由化」「東京五輪」「水俣病」「オー!モーレツ」へと読み進む。高度成長時代の光と影。《鉄の生産量は第二次大戦中の1943年には日本の760万トンに対しアメリカは約8千万トン。これが1973年には日本が1億2千万トンとアメリカに近づき1982年には初めてアメリカの生産量を超した。自動車も1980年1100万台でアメリカを抜いて世界一となった》トランプはこの歴史を知ってるのかな?小川ローザのCMが大当たりした結果の1969年「モーレツ・ブーム」は「猛烈ビジネスマン」という本の出版で「猛烈教教祖」と呼ばれた竹村健一や「もーれつア太郎」(赤塚不二夫)や「猛烈社員スリゴマ忍法」という映画に引き継がれ「モーレツ特訓研修」を経て「モーレツ社員」の名称が定着。その到達点が「水俣病」「四日市喘息」「イタイイタイ病」「ヘドロ」「スモッグ」だったのですね。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。やっと雨が上がる。桜は満開とはいえ黒兵衛とヨメハンだけで見る桜は少々寂しさを醸す。花見は大勢で…というのが正しいのかな?それともヤッパリ「酒なくて何の己が桜かな」と言うべきか。ワン。終日書き下ろし原稿と格闘。晩メシは最近亡くなった篠田正浩さんを追悼して映画『スパイ・ゾルゲ』を見ながら。篠田さんは尾崎秀実の役を最初は作家の島田雅彦氏にやらせたかったようだった。誰かのパーティで偶然ご一緒したときに小生の小説『京都祇園遁走曲』を読んでおられた篠田氏が解説を書いていた島田雅彦氏を紹介してほしいと言い出されて後日銀座で3人で食事。そのあと銀座に残るゾルゲと関係ある場所を何カ所か案内された。結局尾崎秀実の役は本木雅弘氏になり島田雅彦氏の俳優デビューはならなかったが映画ゾルゲは篠田正浩監督の遺作となりましたね。メッチャメチャ力の入った3時間に及ぶ映画ですが日本の戦前という時代とゾルゲという人物の不幸が正確に描かれた映画となりましたね。ラストシーンはジョン・レノンの『イマジン』のメロディが流れて訳詞が文字で出てきます。井沢元彦氏とのコラボのYouTubeでもオリンピックの開会式で『イマジン』の使われることがルールとして決まったことを話してます。この歌は凄い詩ですね。♪天国も地獄もなく…宗教もなく…国もなく…そんな世界をイメージしよう…ですからね。

BOOK |
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三島由紀夫『金閣寺』 映画を見て読み直したくなりました。小生は生まれ育ちは京都ですが金閣寺を実際に見たのはNHKの仕事で50歳くらいになったときでした
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4月5日(土)
ベッドでの読書『20世紀にっぽん人の記憶』は読了寸前。「アポロ11号」「EXPO'70」「沖縄返還」「オイルショック」「コンビニ」「わたし作る人ぼく食べる人」「おしん」「田中角栄」と読み進む。小生の中3から大学時代。オイルショックのとき実は石油もトイレットペーパーも余っていた。令和の米騒動も同じですね。角栄と越山会の金権政治はなぜ非難されたのか?秘書の早坂茂三は自民党幹部のように「財界から広く金集めをしましょう」と進言した。すると角栄は「あいつらは東大だよ。先輩や後輩や級友が財界にごまんといてボタンひとつで自動的に金が振り込まれる。だがオレは違うんだ。オレはオレのやり方で金を集める。あいつらには頭を下げない」と言ったという。自民党が企業団体献金に今も執着するのは学閥のせいもあるのかな?ロッキード事件もアメリカが仕掛けた?石が流れて木の葉が沈む…ワン。ベッドを出て花曇りのなか黒兵衛と散歩。ウチの近所にある「敷島の大和心」の満開は明日かな。ワン。敷島の大和心を人問はば朝日に匂う山桜花。この本居宣長の歌に特攻隊の名称が全て含まれている。だから桜は血の色が滲む…などとTVのニュースでは誰も言いませんね。ワン。終日書き下ろし原稿の整理。昨日世界思想社から年刊の『世界思想52号』が送られてきた。今年のテーマは「争う」。目次に「戦争」「ジェノサイド」「パレスチナ問題」「ホロコースト」などの文字が並ぶ。昨年のテーマ「スポーツ」と正反対?いや類似語?読まねば。TVニュースではトランプ大統領の「関税」が騒がれている。人間の営みのなかで唯一神話に存在しないのが経済。神様はカネに困りませんからね。だから人間も経済をどうしてイイかわからないまま馬鹿な男が現れると無茶をするのですね。カネを使うには教養が反映しますが金を儲けるのに教養は不必要ですからね。晩メシは市川崑の映画『炎上』を見ながら。原作は三島由紀夫『金閣寺』。市川雷蔵&鴈治郎&仲代達矢の演技そして宮川一夫の撮影が見事。金閣寺が白黒の世界で見事に燃え上がります。映画は90分で十分ですね。

DVD |
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『女経』 若尾文子・山本富士子・京マチ子の素晴らしさ面白さを増村保造・市川崑・吉村公三郎の3人の監督が描いた見事な映画です
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4月6日(日)
読売新聞社・編『20世紀にっぽん人の記憶』(読売新聞社)読了。最後は「ニッポン人よどこへ行く」と題して2000年(新聞連載時)における「近未来」の話題。しかし四半世紀後にそれを読むと少々シラケる。当たり前の話だが阪神淡路や東日本や熊本や能登半島の大震災もなければパンデミックも9・11もパレスチナ紛争もウクライナ戦争もナシに近未来の話をされても仕方ない。それだけ未来の話は難しいのだろうけど本書には「Jリーグ誕生」といった絶対に取り上げるべき近過去の話題が欠けていたのも残念。まぁ読売新聞社が「Jリーグ」誕生の話題を取りあげるのは困難でしょうが(苦笑)参考文献のなかに小生の拙著『スポーツとは何か』(講談社現代新書)が選ばれてるのに残念ですね。読売だけでなくこのあたりが朝毎を含む日本のマスメディア最大の欠陥と言えますね。メディアがスポーツを所有したり支配したりしてはイケマセンね。ワン。ベッドを出て黒兵衛とヨメハンと満開の花見散歩。酒なくて美し過ぎる桜かな過ぎたることは及ばざる哉。とはいえ近所に満開の桜があちこちに見られるのは悪いことではないですね。ワン。日曜なので書き下ろしの仕事は少しにして昼飯のあと巨人阪神戦を楽しむ。1-0で虎の3連勝。勝ったぁ勝ったぁまた勝ったぁよーわい巨人にまた勝ったぁ…という連呼を憶えている虎狂はもういないのかな?晩メシは映画『女経』を見ながら。増村保造監督の第1話『耳を噛みたがる女』市川崑監督の第2話『物を高く売りつける女』吉村公三郎監督の第3話『恋を忘れていた女』を若尾文子・山本富士子・京マチ子の三大女優が怪演(?)。見事な演技と見事なカメラワークを堪能しました。1960年前後の日本映画は本当にレベルが高かったですね。アッ。今日は俺の誕生日。ヨメハンがサーロイン・ステーキで祝ってくれました。何歳になったかは数が多すぎて忘れました(笑)。

4月7日(月)
ベッドの読書は週刊誌。新潮・文春を持ち込む。いま週刊誌はどれほど読まれているのだろう?と思いながらいろんな記事に目を通す。TVのワイドショウのネタの詳しい解説。そー言えば昨年秋久し振りに大学の教壇に立って学生たちに小生がデビューした『GORO』や『平分パンチ』を見せたときの学生たちの表情がオカシかった。彼らは初めて若者雑誌というモノを見て珍しそうに手に取ったのだ。テレビは見ない。新聞も読まない。情報はスマホから。どんな情報に飛びつくのか聞いておくべきだったですね。かつて大江健三郎がノーベル文学賞に選ばれたときワイドショウが東大赤門前でインタヴューしたのを憶えている。大江の小説を読んだ学生は一人もいなかった。このような断絶はいつ何年に起こったのかキチンと調べる必要がありそうですね。ワン。ベッドを出て満開の桜並木の下を黒兵衛と散歩。早くも桜吹雪が舞い始める。昔RKB毎日放送の製作した『桜吹雪のホームラン』という大下弘を題材にした素晴らしいTVドキュメンタリーがありましたね。大下弘氏の十三回忌には小生も福岡に招かれてシンポジウムの司会をしました。パネラーは中西・豊田・稲尾に大下弘の未亡人大下鐵子さん。それにノンフィクシュン作家で『大下弘虹の生涯』(新潮社)を書いた辺見じゅんさんという凄いメンバー。大下弘さんが草野球の指導していたときの子供たち(既に大人になっていましたが)も大勢客席に集まり司会の小生が「4番打者の人は手を上げて」「エースだった人は?」と聞くと全員が手を上げたのを憶えている。大下さんはそーゆー野球をやらせいたのですね。そして中西・豊田・稲尾の各氏も大下さんに協力してライン引きやボール拾いをしていたとか。大下弘という人は『大下弘日記−球道徒然草』(ベースボールマガジン社)という著書を読んでもわかりますが本当に素晴らしい人だったんですね。さまざまなこと思い出す桜かな(芭蕉)。
4月7日(月)つづき
ネット『スラッガー』の連載『ベースボール今昔物語』の第8回『ホームランは昔はヒットと同程度の価値しかなかった』という原稿を書きあげて送稿。夕方から産経新聞客員論説委員の佐野慎輔さんをゲストに迎えてYouTube『TAMAKIのスポーツジャーナリズム』の収録。「スポーツの未来はどうなる? どうなるべきか?」という週間テーマで「オリンピックの未来は? 日本のメダル獲得はジリ貧? 日本開催もナシ?」「日本野球の未来は?メジャーの二軍(選手供給団体)に?」「AIとeスポーツが未来のスポーツ界を支配するのか?」というテーマで"旧友(球友?)"と話し合う。アップされたら是非御覧下さい。晩メシは神奈川テレビの吉本新喜劇を見ながら。吉本にはあまり好きになれないタレントも少なくないけど新喜劇に出ている芸人さんには誰もが好感を抱けますね。

4月8日(火)
ベッドの読書に『中島敦全集T』を持ち込む。書籍(本)の馬鹿馬鹿しさを見事に描いた『文字禍』を読み直したくなったのだがソノ前にやはり久し振りに『山月記』を読み直してしまう。舞台は唐代の中国。自らの《臆病な自尊心と尊大な羞恥心の所為(せい)》で《詩人になりそこなって虎になってしまった哀れな男》の話。わずか11ページの短編小説ですがコレは大名作ですね。《人間は誰もが猛獣使でありその猛獣に当たるのが性情だという。己(おれ)の場合この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ》オマエの場合は何だ?と問いかける恐ろしさを秘めた傑作は『文字禍』や『名人伝』と並ぶ中島の傑作短編ですね。終日書き下ろしの文字と格闘。俺は「虎」と格闘しているのか?(笑)晩メシは昼間NHK-BSでやっていた和田誠監督の映画『怪盗ルビー』を見ながら。筑摩書房で編集した『虫明亜呂無選集』全3巻や拙著『京都祇園遁走曲』(文春文庫)の素晴らしい表紙絵と装丁を手掛けてくださった方の監督した映画を以前から見たい見たいと思いながら見逃し続けていた映画を初めて鑑賞。メッチャ面白く可愛らしい1988年の映画でした。真田広之と小泉今日子がサイコー!助演陣もサイコー!スタッフもサイコー!和田誠監督の映画『麻雀放浪記』はDVDで何度も見ているのでマダ見ていない『真夜中まで』を見なければ。昨日入稿した『スラッガー』の原稿『ベースボール今昔物語第8回』が『「ホームランは常に野球の華だった」は誤り...今も根強い球界の"間違った常識"』というタイトルでアップされてます。御一読ください。https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=94789

4月9日(水)
ベッドのなかで中島敦の短編集『古譚』を読む。再読でも新しい発見があってメッチャ面白い。『狐憑(きつねつき)』は古代ギリシアが舞台。ホメロス以前に誕生した物語の語り部の話。『木乃伊(ミイラ)』の舞台は古代エジプト。古代波斯(ペルシア)の将軍が埃及(エジプト)遠征で自分の前世を生きた木乃伊と出逢い輪廻に思いを馳せる。『文字禍』の舞台は古代両河地方(メソポタミア)のアッシリア。図書館に現れる「文字の精霊」の話。古代メソポタミアでは文字が粘土板に書かれたから《歴史とは粘土板のこと。書かれなかった事は無かった事》なのだ。そして文字の精霊の危険なことに気付いた学者は「文字への盲目的崇拝を改めずんば後に臍(ほぞ)を?む」と警鐘を鳴らしながら地震で図書館の多くの粘土板の下敷きになって亡くなる。粘土板をAIコンピュータに置き換えられますね。ワン。黒兵衛の散歩は後回し。ベッドを出てRKB毎日放送『田畑竜介GrooonUp』の『Catch Up』にZOOM音声出演。今日のテーマは大谷とドジャースがトランプ大統領の招待を受けて表敬訪問した意味。MLBだけでなくNFL・NBA・NHLの優勝チームも招待されるのはそれらのゲームがアメリカ大陸生まれで南北戦争後のアメリカ・ナショナリズムから生まれ発展した独自のスポーツであるためアメリカ大統領は「ヨーロッパとは違うんだぞ!」という意思表示に使ってきたのですね。でもトランプがドジャースの選手をそれぞれ大統領執務室にも招いたのはトランプ個人の政治的行為(スポーツ・ウォッシング)と言えますね。ワン。ラジオを終えて黒兵衛と散歩のあと終日書き下ろし原稿と格闘。NHK-BSがブラッド・ピット主演の『マネーボール』をやっていたので晩メシ時にDVDを引っ張り出してメイキングを見る。アスレチックスのゼネラル・マネージャーのビリー・ビーン本人も登場して面白かったけどサイバーメトリックスによるチーム作りは今や常識で現在はビッグデータによるAI分析が主流ですね。それもいずれ…中島敦が予言したように人間がAIに押し潰されて臍を?むようになるのでしょうか?

BOOK |
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『中島敦全集3』ちくま文庫 弓の名人が到達する「不射之射」。『名人伝』は最高傑作ですね。
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DVD |
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『鍵』 市川崑監督による大谷崎の作品の映画化。イイ映画ですが文学作品をミステリー・タッチの大衆映画にしてますね
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4月10日(木)
『名人伝』をベッドで再読。中島敦の小説のなかではコレが一番好きですね。弓矢の大名人が漫画的なまでの最高の技量を発揮しながら最後は「不射之射」の至高の領域にまで達しさらに弓矢の存在までも忘れてしまうという物語。中島敦の小説は人間の全ての行為を全否定する過激さがありますね。ワーグナーの思想に似てることを思えばオペラ向きの題材と言えますね。オペラ化されてるのかな?調べてみよ。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。桜吹雪が舞い公園の地面は一面の花絨毯。昔の言い方なら花蓆(はなむしろ)。川の上なら花筏(はないかだ)。枝は葉桜三分。このあたりが桜も一番の見所。ドラマがありますね。花の命は短くて苦しき事のみ多かりき。ワン。終日来週の名古屋でのオペラ講座の準備。テーマはワーグナー。佐渡裕さんの兵庫県立文化芸術センターでの今年のオペラがワーグナーの『さまよえるオランダ人』なので小生が毎年名古屋から計画しているオペラツアーのため講座も3回連続ワーグナー。ツアーは10年以上続いているがやはり人気は蝶々夫人や椿姫。芝居蒟蒻芋蛸南瓜はおばさま方が中心ですからね。ワーグナーの観客は男性中心。あ。今までに通った劇場で客席が過半数以上の男性で占められたのを見たのはワーグナーとブラームスと都はるみさんのコンサートでしたね。今年も何とかオペラツアーを成功させたいですね(「蔵出し音楽」参照)。晩メシは市川崑監督谷崎潤一郎原作の『鍵』。中村鴈治郎が脳溢血経験者かと思うほどの名演。京マチ子も凄い女優さんですね。ヨメサンの故郷の京都上賀茂神社の傍が舞台。懐かしかったですね。『鍵』は昔小学6年の時に家にあった日本文学全集のなかにあったのをケースから抜き出して読んでいたらいつの間にか親父がケースから抜き出して隠してしまいました(笑)。電器屋の親父がこんな本を知ってるのかと嬉しかったことを憶えてますね(爆)。

BOOK |
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谷崎潤一郎『鍵』中公文庫 久し振りに読み直して谷崎の凄さに酔いました
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『麗しのサブリナ』 谷崎の『鍵』に出てくる一家が見に行く映画です。オードリー・ヘップバーンとハンフリー・ボガード。ちょっと意外かな?
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4月11日(金)
昨日見た映画市川崑監督の『鍵』が面白かったのでベッドでの読書に原作の谷崎潤一郎『鍵』を持ち込む。主人公の男は原作では大学教授。映画は骨董鑑定士。舞台が京都ですから見事。男の年齢は56。演じた鴈治郎も57。妻は45。京マチ子は35。イイセンですね。妻に近づく男(仲代達矢)は原作では《ジェイムズ・スチュワート似》。妻と娘と男で見に行く映画はオードリー・ヘップバーン&ハンフリー・ボガード主演ビリー・ワイルダー監督の『麗しのサブリナ』。1956年(俺は4歳の時)の『中央公論』に連載した小説に谷崎は当時の流行を入れ込んでますね。こーゆー過去の歴史の流れはどのあたりで途切れたのかな?ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。花吹雪&早くも葉桜。小生は毎年書いてますが満開の桜のあとの青葉茂れる葉桜の濃い緑も好きですね。ワン。終日原稿書きは月刊『ZAITEN』(財界展望新社)の連載「今月のスポーツ批評」93回。ドジャースがトランプ大統領のホワイトハウスに招待されて表敬訪問した"政治的意味"を書く。南北戦争後のナショナリズムの勃興でアメリカ独自の(スポーツ)文化をアピールする伝統に従ったのが"大きな政治的意味"なら大統領がドジャースの各選手を執務室に招いて記念品を手渡したのは"トランプのセコイ政治利用(人気取り)"ですね。晩メシは『チコちゃん』や広島vs巨人戦を見ながら。2−10になるまで戸郷を投げさせたのは阿部監督のミスですね。ま。これでセ・リーグは団子レースになって面白いですが。トランプの関税に習近平は徹底抗戦。神話に存在しない経済の争い。「関税を渡る舟人舵を絶え行方も知らぬカネの道かな」ですね。行方がわからないなら「カネの道」より「恋の道」のほうがイイですね。ワン。

4月12日(土)
谷崎潤一郎『鍵』読み進む。旧仮名遣い&旧漢字&カタカナでも谷崎の文章はリズムが美しいので読むのに苦にならない。娘の敏子のことを木村は「イヤゴー的性格」と評している。面白い。もちろんシェイクスピアの『オセロー』に登場する「イヤーゴ」のこと。『オセロー』はオセローとデズデモナを罠にかけるイヤーゴが主人公とも言えるのでひょっとしてこの小説は「女のイヤーゴ(敏子)」が主人公か?読み進みましょう。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。染井吉野が終わっても枝垂桜はまだピンク色。連翹(れんぎょう)躑躅(つつじ)五月(さつき)も綺麗。ワン。午前中チョイと仕事したあと午後から万博の開会式。70年の大阪万博へは3回&記念コンサートへも3回通ったが今回はパス。昔の万博には胸を膨らませる「未来」が存在したけど今回の大阪関西万博の「未来」は「現在の延長」ですからね。TVの報道で十分かな。TVや新聞がメタンガスやIRをどんなふうに報道や批評するのか見ものですね。昨日書いた『ZAITEN』の連載をブラッシュアップして送稿したあと昨日フランスから帰ってきた隣家のピエールさんを誘って久し振りに『鮨処もり山』へ。大将夫妻は1月に休みを取ってフランス・イタリアを旅行されてきたのでそも土産話を聞いたり美味しい肴をいただいたり。フランスではピエールさんの家にも寄ってノルマンディへも案内してもらったそうだが現在の海外旅行はスマホでナンデモできるそうですね。我々にとっては最早無縁の話かな。

4月13日(日)
『鍵』読み進む。とうとう主人公が脳卒中で倒れる。市川崑の映画よりも原作のほうがエロいですね。しかし卑俗に堕さないところが谷崎の凄味ですね。小説発表時に猥褻性が問題にされたのはこの作品だったか?それとも『瘋癲老人日記』だったか?小生は餓鬼の頃近所の京都祇園の建仁寺で草野球をやっていたところが舞妓衆数人と歩いてる和服姿の老人にボールを当てそうになって一緒に歩いてた男にメッチャ怒られたことがあった。ちょうど近所の南座で『瘋癲老人日記』の芝居を上演していったこともありアノ老人は大谷崎だったと今も信じている。ワン。春雨のなか黒兵衛と散歩。春雨じゃ濡れて行こう…などという台詞は今では知ってる人はいなくなりましたね。終日書き下ろしと格闘&明日のオペラ講座の準備。万博オープニングの一万人の第九は雨のなか。何やら前途を象徴しているように思えるけど指揮した佐渡さんもしんどかったでしょうね。日本館だかどこかのパビリオンはバイオ発電で食べ残し食品のメタンガスから発電してるとか。何やら悪い冗談に聞こえてしまったけど埋め立て地の地下のメタンガスは大丈夫かな?

4月14日(月)
ベッドで『鍵』読み進む。谷崎の小説は本当に面白い。字面を追って読み進むだけで心地好いリズムに導かれて谷崎の世界に誘い込まれる。女の淫乱な裸体を隅々まで眺める老人の描写は川端康成の『眠れる美女』を連想させたりもするがそんな夢幻的なものではなく肉感的なところが面白いですね。そー言えば最近はポルノ小説というジャンルは消えてしまったのかな?これも若者の活字離れの結果かな?ワン。ベッドを出てふだんより30分早く黒兵衛との散歩を済ませて東海道線品川経由で名古屋へ。栄中日文化センターでオペラ講座。7月の兵庫県立文化センターでの佐渡裕さんプロデュースのオペラ公演ツアーが『さまよえるオランダ人』(蔵出し音楽参照)なので3回連続ワーグナーを取りあげる。ワーグナーやブラームスとなると観客(聴衆)に男性が多くなりますね。我が講座も20人中男性が過半数かな。イタリアオペラだと7割以上が女性だが…というのはさて措き『オランダ人』が女性の妄想だったり…女性の恋人に撃ち殺されたり…という新演出を紹介したあと『ローエングリン』から『トリスタンとイゾルデ』を解説…難しいことは言わずワーグナーはとにかく音楽(無限旋律)に酔えば良いということでジャン=ピエール・ポネルの幻想的な見事な演出を楽しんでもらう。講座を終えて帰りはこだまでゆっくりと小田原経由大船へ。谷崎潤一郎『鍵』新幹線車内で読破。「性」を媒介にした愛憎と嫉妬が入り乱れる「行方の知れぬ恋の道」を面白くミステリー仕立ての映画に翻案した市川崑を蓮實重彦さんが認めないというのは納得ですね。けど文学も映画も(オペラも)所詮は大衆相手の営みと思えば目くじら立てることもないですね。新富士駅付近で春霞のなかで屹立していた富士山のぼやけたなかにも毅然とした大きな姿は美しかった。帰宅して晩飯食べながら『吉本新喜劇』を楽しんで酒呑みながら『映像の世紀』でアウシュヴィッツの生存者の証言を見る。ナチスを許すと語った生存者&イスラエルが今はナチスと同じことをやっていると語った生存者…それらの発言は重いですね。

4月15日(火)
ベッドで谷崎全集第17巻に『鍵』と共に収録されていた『過酸化マンガン水の夢』を読む。16ページほどの短いエッセイで家族でストリップ・ショウを見に行く話やソノ演出に東郷青児・村松梢風・三島由紀夫・丸尾長顕らの名前が出てきたりストリッパーのジプシー・ローズや春川ますみの名前が出てきたり仏映画シモーヌ・シニョレが出演した『悪魔のやうな女』を見に行ってソノ解説があったり…までは楽しく読んだが…最後の中国の漢高祖夫人の話は強烈でとてもここに引用などできない。《過酸化マンガン水の美しい紅い溶液の中に》四肢を斬られて入れられた夫人の話。谷崎はその夫人をテーマにした小説を企図していたようだがそれが実現していたら『鍵』どころではないエロを通り越した強烈なグロになっていたはず。それを谷崎はどんな流麗な文章で飾ろうとしたのか知らないが大天才文筆家の発想はぶっ飛んでますね。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。花は散り緑は未熟。少々中途半端な季節の変わり目の中を歩く。ワン。終日書き下ろし原稿と格闘&昨日収録できなかった『TAMAKIのスポーツジャーナリズム』の準備。ゲストは小林信也さん。晩メシは昼間NHK-BSで放送していた『永遠(とわ)に美しく』の録画を見ながら。ドタバタ喜劇(スラップスティック)もブラック・ジョーク映画も大好きだしメリル・ストリープはドーデモイイけどゴルディ・ホーンが大好きなので見たけど単なるハリウッド的ドタバタでしたね。ゼメキス監督は同じドタバタでもティム・バートンほどの奥行きがないですね。メリル・ストリープの首が180度ひねれてもゴルディ・ホーンのお腹に大きな穴が開いてもショッキングでブラックな笑いの迫力が生じないですからね。

DVD |
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『グレート・レース』 ジャック・レモンの素晴らしさはこの馬鹿馬鹿しい映画を見てもわかります。トニー・カーチス&ナタリー・ウッド&ピーター・フォークも最高です
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BOOK |
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『世界思想52号2025年春』世界思想社 去年は特集が「スポーツ」で小生が巻頭原稿を書きました。今年もレベルが高い。勉強になります。多くの人に読んでほしい!
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4月16日(水)
ベッドの読書は何日か前に京都の世界思想社から送られてきた年刊誌『世界思想52号』。昨年は特集のテーマが「スポーツ」で小生も寄稿させていただいたが今年のテーマは「争う」で冒頭からウクライナ戦争&イスラエルのガザ侵攻とハードな話題。《共存や平和を希求する(略)感情を凌駕して戦争を継続させる源泉となってきたのが領土への固執》だという。嗚呼。ノンフィクション作家の梯久美子さんへのインタヴュー『なぜ戦争を書くのか「内蔵の言葉」を探して』が興味深かった。梯(かけはし)さんが吉本隆明への聞き書き『ひきこもれ ひとりの時間をもつということ』(SB新書)の取材で「皮膚の言葉」(コミュニケーションのための言葉)と「内臓の言葉」(自分が納得して理解するための自分にとって腑に落ちる言葉)という二つの言葉に出会う。そして吉本氏は後者のほうが「大事なんじゃないか」と。なるほど。なるほど現在は《皮膚の言葉ばかりが重視されている気がします》ね。梯さんの本『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官栗林忠道』(新潮文庫)『昭和二十年夏、女たちの戦争』(角川文庫)『戦争ミュージアム』『原民喜』(岩波新書)を読まなきゃ。ワン。黒兵衛の散歩はヨメハンに任せてベッドを出てRKB毎日放送『田畑竜介GrooonUp』の『Catch Up』にZOOM音声出演。今日のテーマはプロ野球が昨年史上最多の観客数を記録してメジャーの放送も毎日あるけど野球人口へ強烈に激減してるという話。草野球の風景も見なくなったし小生が小学生のときは京都の寺で「太鼓ベース」をやっていたことを紹介。東北で「沢庵ベース」九州で「鉄管ベース」と呼ばれた三角ベースはすべて take one base から生まれた言葉ですよねという話に加えて京都のお寺で大活躍していた子供の名前は衣笠祥雄だったと紹介。ワン。ラジオを終えて黒兵衛と散歩のあとイロイロ仕事。月曜に収録できなかった『TAMAKIのスポーツジャーナリズム』を夕方収録。ゲストはスポーツライターの小林信也さんで野球と相撲の話の2本を収録。どちらもメッチャ面白いですけど特に大の里と高安の「人情話」はケッサクでした。近々アップされますので是非御覧下さい。晩メシは昼間NHK-BSが放送していた『アパートの鍵貸します』を見ながら。このビリー・ワイルダー監督の傑作コメディは隅から隅までしてるけど何度見ても面白くよくできてますね。

4月17日(木)
ベッドで『世界思想52号「争う」』読み続ける。「戦場としてのスマートフォン」「時を超えるICC(国際刑事裁判所)の闘い」「争いの軌道を変える-和解の政治マンデラ再訪」「戦争と協力の進化的起源」「ギリシア悲劇の今日性-報復の連鎖のなかで」「戦争は本能ではない」「考古学からみる「争う」「争い」」「暴力のなかで人を救う」まだ半分くらいしか読んでおらずタイトルだけ並べましたがどれも興味深く勉強になりました。なかでも"つやちゃん"というペンネームの文筆家が書いた「ヒップホップ文化は争いつつ争わない」はメッチャ面白かった。スポーツ(オリンピック競技)としてのブレイキン(ブレイクダンス)とカルチャーとしてのブレイキンの違いが詳しくわかりやすく解説されていた。ヒップホップには「対戦相手との戦いBattle」と「自分自身との戦いStruggle」と「ラッパーたちを見てベットした(賭けた=アンコールを希望した)オーディエンス同士が派閥としてぶつかり合い闘うConflict」があるという。ナルホド。《黙々と自分自身とStruggleし続ける積み重ねによってラッパーは争わずしてBattleに勝ちConflictし合う派閥の中でも一大勢力を築き上げることができる》のだ。《誕生から50年以上を経ることで世界中にプレイヤーを抱えビジネスと結びつきながらそれでもカルチャーとしての純度を一定水準保ち続けているヒップホップの特異性》を保ち続け《「争う」ことと「文化としての繁栄」がこれほどまでに長い期間に渡り両立するのは(略)争うことの根源にあるものが自分自身とのStruggleでありそれをジャッジするオーディエンスもStruggleの観察を通してラッパーやダンサーの未来に夢を託しているからなのだ》ナルホド。ヒップホップ文化の「自分自身とのStruggle」と「争わずして勝つ」というのは冗談抜きに武士道であり老荘思想に通じますね。ロス五輪でブレイキンが正式競技から外れたのはヒップホップ文化が「醜い争いに堕さない」ためにも喜ばしいことでしょうね。この筆者"つやちゃん"が巻末の《ブックリスト「争う」》のなかに白井総『永続敗戦論』(講談社)を選んでる意味を考えたいですね。終日書き下ろし原稿と格闘。晩メシは巨人vs横浜を見ながら。田中投手が限界なのか?横浜打線が凄いのか…しかし牧のバッティングはシブイですね。

4月18日(金)〜21日(月)
クソッ。金曜午後から突然発熱。咳も結構激しく痰がからまる。数日前から少し変調があった。原因は月曜に名古屋へ行ったときの新幹線。隣の席の破れたジーンズを履いてた青年が何度か咳き込んでいた。チクショー。その結果土曜日の早大での『スポーツを語り合う会』は欠席。風邪くらい一日で治した若いい頃と違って結構時間がかかってしまった。さあ今から『TAMAKIのスポーツジャーナリズム』の収録です。ゲストはパラスポーツ・ライターの星野恭子さん。土曜日の『スポーツを語り合う会』にも出席されたようですからパラスポーツの魅力を存分に語ってもらいましょう。しっかし…風邪を治すのに三日もかかるとは…コロナだったのかな

4月21日(月)
ベッドで『世界思想53号』特集『争う』完読。「圧倒的他者に何ができるか?」「空白の地図-ホロコースト研究者の居心地の悪さ」「パレスチナ問題は「紛争」なのか-戦争と平和の鍵を巡る探求」「会話における闘争」「私たちの日常に争いを取り戻すために」「争いを想像する」…どれも素晴らしい勉強になる文章だらけ。なかでも勅使河原真衣さんの「争いのあとの静けさ−能力主義のゆくえ」には深く教えられた。《「自立とは依存先を増やすこと」という熊谷晋一郎氏の言葉にも凄いとしか言いようがなったがそこから「能力主義」に徹底的な疑問を付し《争いは生き抜くのではなく生き合う社会には無用だという考えを》導く。お見事!何度も読み返しましょう。まだ熱っぽく体調不良だけど夕方の『TAMAKIのスポーツジャーナリズム』はパラスポーツライターの星野恭子さんを迎えて何とか番組収録。星野さんにはパラスポーツについて教わることばかりですが皆さんもお教わってください。普通のスポーツ以上にパラスポーツにこそ未来は広がっているのですから。

4月22日(火)
ナカナカ体調が戻らない。熱はカロナール(熱冷まし)を服めば平熱になるがその効果が切れると37.8度くらいまで上がってしまう。チクショー。若いときはなら風邪でも何でも体調不良は一日寝れば全快したものだが70を過ぎるとそーはいかないことがしみじみわかる。こういうとき二聴く音楽はハイドンがいい。とにかく心地好く音楽が流れますからね。モーツァルトは少々いろんなことを考えさせられるけどハイドンは何も考えない境地に導かれる。まるで禅の境地かな。ベッドで読む本は漱石の『草枕』に限る。文字を追って文章を頭に入れるだけで別乾坤に導かれる。もう何十回目かわからないけど文字を目で追ってやっぱり凄いと感心していたら新発見と出会った。三十三観音と呼ばれる観音菩薩のなかに楊柳観音と呼ばれる観音様がいるという。新潮文庫の註釈によると《楊柳の枝を手に持ち柳が風に逆らわないように人々の願いをすべて聞き届ける》観音様だという。それって小生の大好きなユーモアたっぷりの禅画家の仙高ェ描く『堪忍蜑謗^』に描かれている柳のアイデアの大元ですね。《気に入らぬ風もあろふに柳哉》の一句が添えられてる見事な禅画。こういう心境になりたいものだが観音様の境地だとは知らなんだ。ワン。ベッドを出てヨメサンと黒兵衛の散歩に少しだけつき合う。体調はいつか戻るだろうけど体力を戻すには相当の時間がかかりそうですな。いや。戻るのかな?いやいや。戻さねば。少し仮眠のあと明日のラジオ出演の準備等少々仕事して酒呑んで寝る。酒は百薬の長。寝るは万薬の長ですからね。

4月23日(水)
ベッドでの読書は漱石の『草枕』を読み続ける。これほど素晴らしい一冊もない。無人島へ持参する一冊は絶対にこれだ!と確信していたら江戸っ子の床屋の大将との会話で「生粋」という漢字に「いなせ」とルビがふってあるのを発見。「生粋」の読みは「きっすい」か「なまいき」のはずで「いなせ」はその語源から「鯔背(魚のボラの幼魚の背中の意」と書くのだと小生が初めて知ったのは虫明亜呂無氏の『時代の陰影−巨人・阪神戦について』を読んだときのことだった(拙著『9回裏2死満塁 素晴らしき日本野球』新潮文庫・参照)。《阪神は明らかに洗練されていた。巨人の田舎臭さに較べるとハイカラで粋で鯔背で阪神のほうが都会チームに映った》この文章を読んだとき少々オーバーに言えばこれぞ真理だ!と確信した。これぞ星飛雄馬のダサさと花形満のカッコ良さでキョジンとハンシンの核心を表すものであり長嶋茂雄と村山実は反対の球団に間違えて入ってしまったということがわかった。それはともかく江戸時代の魚河岸の若衆がボラの幼魚の背中の模様のような髷(鯔背銀杏)を結ったことから「粋な若衆」のような振る舞いを「鯔背」と言うようになったらしい。漱石の当て字もナカナカ粋ですね。ワン。
4月23日(水)つづき
黒兵衛の散歩はヨメハンに任せてベッドを出てRKB毎日放送『田畑竜介GrooonUp』の『Catch Up』にZOOM音声出演。今日のテーマはドジャース大谷選手が利用したメジャーの「父親リスト」について。これはひとことで言うと「公休制度」の一種で試合を休んでも年金計算のときのなどで出勤扱いにするという制度。養子縁組の手続きでも適用されるんですよね。チョット関係ないけど1990年のワールドシリーズ・レッズvsアスレチックス第2戦で子供が産まれそうになって病院へ駆けつけたレッズの投手が自分は第3戦先発だと思っていたら試合がもつれてチームから「Back to ths ballpark! We need you!」とテレビで呼び出された話をする。試合は10回裏サヨナラでレッズが勝利。長男も無事誕生。その投手も第3戦に勝利投手となったとか。この時の投手ブラウニングは完全試合も記録しているのですよね。ワン。ラジオは何とかこなしたけれど体調戻らずゆっくり仕事。タマに咳き込むと腹筋が痛いのはナンデヤ?目やにが溜まってパソコンの画面が見難くなるのも病のせい?とにかく急がず焦らずゆっくり治しましょう。歳やねんから。NHK-BSでオードリー・ヘップバーン&ゲーリー・クーパー&モーリス・シュヴァリエ&ビリー・ワイルダー監督の『昼下がりの情事』をやってたけどこの映画はワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』を知ってると笑いが2倍になりますよね。

4月24日(木)
少々気になることがあったのでベッドに寺田ヒロオ『スポーツマン金太郎』(講談社文庫)を持ち込む。小生が小学生のとき『少年サンデー』(小学館:昭和34〜38年)で熱烈に愛読した連載漫画で御伽村(おとぎむら)で対決していた子供の金太郎と桃太郎がそれぞれ巨人と南海に入って大活躍する話。劇画が登場する前の野球漫画の最高傑作だが探していたシーンがすぐ見つかった。それは巨人で活躍し始めた金太郎に何人かのサングラスをしたヤクザが近づき八百長を強要する(オールスター戦で桃太郎相手に三振するように迫る)シーン。子供向けの野球漫画にも描かれるくらい野球賭博は昭和30年代には一般的だったのですね(結局三振を拒否した金太郎が桃太郎のカーブに三振して野球賭博をしていた観客席は大騒ぎになる。そういう時代でした)。『草枕』はいよいよ那美さんが温泉で主人公と同浴するシーンです。セヤカラナンヤネン。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。熱は引いたけど体調は戻らず。上り坂はまだちょっと苦しいですね。ゆっくり歩いていると近所の人に「お体どうかされたのですか?」と訊かれたので「知恵熱ですよ」と答えて大笑い。70を過ぎて知恵熱はないですよね(笑)。ワン。デスクワークは連合通信の連載『スポーツ博物館』を書く。講談社から今月の現代新書の新刊が送られてきた。小林武彦『なぜヒトだけが幸せになれないのか』帯に「その理由は遺伝子にあった」とある。ホンマカイナと思うが同著者の『生物はなぜ死ぬのか』『なぜヒトだけが老いるのか』が面白かったので読んでみるか。内務省研究会編『内務省 近代日本に君臨した巨大官庁』帯には「なんだ?この「怪物」は…現在の警察庁+総務省+国土交通省+厚生労働省+都道県知事+消防庁…すべてがわかる決定版!」とある。戦前のスポーツを調べていると文部省だけでなく内務省がイロイロ顔を出す。なんじゃこれは?と思うことが多かったので550頁を超す大部だけど読んでみましょう。

DVD |
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『シャイアン』 ジョン・フォード監督最晩年の作品。過去に散々悪者にした原住民(インディアン)に謝罪した作品。『駅馬車』等を見た人は是非ともコレも見てください
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4月25日(金)
『草枕』の那美さんの入浴シーンでなくベッドのなかでは寺田ヒロオ『スポーツマン金太郎』読み続ける。面白い。オールスター戦と日本シリーズでで対決した巨人の金太郎と南海の桃太郎だがシーズンが終わると桃太郎が巨人に移籍。仲良しコンビとして活躍。しかしシーズン後は再び桃太郎が大洋ホエールズ(現DeNAベイスターズ)に移籍して金太郎と対決する。ただしこの漫画は友情物語(『巨人の星』のような人間ドラマ)だけでなく野球のプレイの面白さ(見所=クロスプレイやダブルプレイの見事さ等)や昭和30年代ならではの野球風景(ヤクザや賭博やファンの加熱)が随所に描かれている。私は人間ドラマよりも野球ドラマのほうが好きですね。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。体調はほぼ元に戻ったようだが咳をすると何故か激しく腹筋が痛む。ナンデヤネン。ヨーワカラン。ワン。デスクワークは『スラッガー』の連載『ベースボール今昔物語』第10回。昔ニューヨークのセントラルパークで見た幼稚園の父兄の対抗戦やマンハッタン・レストランリーグのスターバックスvsマクドナルドの試合の話を書く。アメリカ野球は草野球も面白いのですよ。晩メシはジョン・フォード監督の最晩年の作品『シャイアン』を見ながら。それまで「悪人」として描いてばかりいたネイティヴ・アメリカン(インディアン)に対してフォード監督が贖罪の意を込めて製作した映画だとか。ナカナカ面白いがワイアット・アープやドク・ホリデイが出てきたところで少々ワケがわからなくなって阪神vs巨人に変更。『シャイアン』はフォード監督の重要な作品のようなので明日もう一度ゆっくり見直します。猛虎強い!

4月26日(土)
『スポーツマン金太郎全4巻』は第3巻に突入。桃太郎は金太郎と同じ巨人にいてはライバル心が衰えるという理由で大洋に移籍。まるでFA以上の振る舞いだが漫画だからイイでしょう。昭和30年代の野球はヤジがキツかったですね。少しでも投手が打たれると敵味方に関係なく「下手糞オオー!」「変われ−!」「引っ込め−!」ですからね。確かに小生の小学生の頃…いや大学生の頃までのプロ野球では汚いヤジはイッパイ飛んでました。今でも憶えてるのは後楽園球場三塁側の阪神ファンの親父のヤジ。「コラ−!××!背中もパア(8)なら頭もパア!」誰のことを指してかはわかりますよね(笑)。ワン。俺は微熱と咳痰から解放されたようだけど今度はヨメハンが咳き込み始める。やっぱり俺がコロナを持ち帰ったかな?と思いながら2人で最近オープンした近くの診療所へ。血液検査して喉の薬と抗生物質をもらって帰宅。昼飯のあと昼寝で目が覚めたらBS日テレで甲子園の阪神巨人戦。思わず見てしまう。同点の8回裏無死満塁から大山&坂本連打。虎が巨人戦開幕から5連勝。虎狂を引退してもう何年にもなるがやっぱり気持ちはスッキリしますね。チョイとイロイロ仕事したあとTBS『報道特集』でBC級戦犯の特集を見る。第二次大戦を体験してアジアの人々に対して贖罪の気持ちを込めた謝罪を個人的に行った人もいたのですね。俺の両親もそうだけど戦争を直に知っている人達は絶対に無条件に反戦を唱えますね。それは国全体&国民全体でで悲惨な戦争を引き起こし体験した日本人全体に言えるはずですが…。

4月27日(日)
『スポーツマン金太郎全4巻』読了。久し振りに読み直して感激。阪神タイガースにデトロイト・タイガースからの一次移籍選手のターザンが来日して金・桃と対決。大洋ホエールズ(現DeNA)に移籍した桃太郎がサブマリン(アンダースロー)に転向しさらにスイッチピッチャーになって金太郎やターザンと対決。漫画独特の破天荒な荒技を駆使しながらも野球の面白さ楽しさが充溢した『巨人の星』以上の名作です。最後に金太郎や桃太郎が大リーグへ誘われても行かないことを「日本プロ野球の宝だから」という台詞がある。漫画の世界だけでなく現実のプロ野球も早くそのように言える組織になってほしいけどアメリカのメジャーは野球をいちばん大事に扱って育てている組織だけど日本のプロ野球は野球よりも大切なモノ(親会社の利益)を一番に考えて野球を利用している組織ですからマズそれを改めないとイケマセンね。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。俺はコロナから立ち直ったみたいだけどヨメハンの体調が危うくなったので短い距離にする。ワン。散歩のあと少々休んだあと鎌倉市議会選挙へ。誰に入れるかはさて措きとにかく女性がイイですね。男は明治以来散々悪いことばかりしましたからここらで指導者全部女性にした方がイイというエッセイをもう30年以上前に書きましたからね。ヨメサンとコンビニで買い物して帰宅。久し振りに阪神巨人戦をじっくり見る。今日ぐらい虎が負けるやろと思たけどやっぱり負けた。しかしこんな弱い巨人に何度も勝つチャンスがありながら勝てんようではアキマヘンなあ。晩メシはNHKスペシャル『人体』を見ながら。細胞と命の話。科学は物凄い進歩かもしれんけど人間の心や社会は進歩しまへんなあ。嗚呼。

4月28日(月)
ベッドでの読書は雑誌『ZAITEN』6月号。特集『記者クラブ「メディア腐敗の元凶」』を読む。日本のマスメディアにいる人はこの「権力癒着ぬるま湯体質」の住み心地が良いのでしょうね。佐高信氏の連載「賛否両論」対談vs江田憲司氏の「財務省の大罪」も興味深かった。マスメディアにも財務省にも「表」に顔を出さないで権力を手にして世の中を動かして北叟笑んでいるイヤラシい奴らがいるのですね。嗚呼。筑摩書房のPR誌『ちくま』5月号も読む。斎藤美奈子さんの『世の中ラボ180』は「中居正広事件を生んだフジテレビの企業風土」。中川一徳『メディアの支配者』上下(講談社文庫=日枝クーデターを描いた講談社ノンフィクション賞&新潮ドキュメント賞受賞作)吉野嘉高『フジテレビはなぜ凋落したのか』(新潮新書)2冊読んでみようかな。蓮實重彦氏が『「大統領」というものが時代や国籍を問わずどうも好きになれない』というエッセイを書かれていた。JFKも嫌いだと。ふ〜ん。彼はマリリン・モンローとの酷いスキャンダルがあっただけではなく赤狩りにも関与していたのですね。ワン。ベッドを出て黒兵衛と散歩。俺はコロナ(?)から回復したけど今度はヨメハンが喉をやられたらしい。散歩はサッサと済ませる。ワン。今日の『TAMAKIのスポーツジャーナリズム』の収録はゲストを呼ばず開始から2ヶ月を経て小生がマトメの3本を話す。@『スポーツは民主主義からしか生まれない』A『日本人はなぜ野球を好きになったのか?=チームプレイと団体競技の違いを知らない日本人』B『スポーツ文化・野球文化・サッカー文化…文化とは何か?文化とカルチャーの違い』の3本を20分くらいづつ話して夕方から収録。順次公開されますので皆さん御覧下さい。そして登録をよろしく!

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