コラム「ノンジャンル」
HOMEへ戻る
 
表示文字サイズ選択:
標準
拡大
掲載日2012-04-25

この原稿は、今も毎号連載で書かせてもらっている(株)ヤナセのPR誌『YANASE LIFE PLAISIR』2010年7・8号の巻頭コラムFRONT VIEWに書いたものです。私が大学の教壇に立ち始めて早くも10年以上の月日が経ちました。今年からは集中講義だけでなく、毎週教壇に立つという日常的な授業もやり始めたので、そのことを記念して(関係ないかな・笑)“蔵出し”します。

大学の教壇に立って……〜ジャーナリズムとアカデミズム

 いろんなメディアでスポーツを書いたり語ったりしてきた私に、最近は大学で教える機会が増えた。今年は3つの大学と1つの大学院で客員教授を務めている。

 少子化の時代にあって、スポーツの授業が入学希望者の増加に貢献する……のかどうかは知らないが、小生は大学を卒業していないので、教える側に立つのは大変嬉しく、意気にも感じて教壇に立っている。

 授業はスポーツ・ジャーナリズム論。
 スポーツを知る。スポーツを見る。スポーツを訊く。スポーツを想像する。スポーツを考える。スポーツを表現する……。

 この6つのテーマを軸に、スポーツやメディアの歴史を講義したり、スポーツの見方、選手へのインタヴューの方法、文章の書き方、表現の仕方などを教えたり……、スポーツ界の現状、スポーツ・メディアの問題点などを一緒に考えたり……。

 とはいえ、大学はスポーツ・ジャーナリストを目指す学生ばかりではないので、スポーツを題材にして様々な物事を「考える方法」を身につけてもらうよう工夫している。

 たとえば「スポーツ文化」というテーマを取りあげる場合、「スポーツ文化とは何か」ということを、まず学生自身に考えてもらう。

 その答えがわからない場合や、上手く自分の考えを言葉で説明できない場合は、反対語を考えてみる、という方法があることに気付いてもらう。「平和」を考えるには「戦争」を、「生きる」ことを考えるには「死」について考えてみる、という方法だ。

 もっとも、「スポーツ」や「文化」の反対語となると少々厄介だが、後者は「文武両道」という言葉に気付けば、すぐに思いつく。「文化」の反対語は「武化」。

 武力で民を治めることが「武化」(武断政治)であり、その反対に武力を用いず、学問によって人々を教化し、治めることが「文化」(文化政治、文治政治)。

 そこまでわかると、今度は自分たちが「スポーツ文化」という言葉を使うときの感覚と、どこか微妙なズレがあることにも気付く。

 それは「文化」が「カルチャー」という言葉の翻訳語として使われているからで、「CULTURE」は「AGRI-」(土を意味する接頭語)が頭に付くと「農業・農産物」の意味になるように、本来は「(自然に)実ったもの」「(みんなに)実らせたもの」という意味だ。

 ならば「スポーツ文化」は、「スポーツで実らせたもの」となるが、だったら、「スポーツ」の反対語は?

 これは、さらに難しいが、スポーツの様々な特徴を話し合ううちに、「仕事・労働」といった反対語に辿り着く。ならば、はっきりと説明できずに、わかったつもりになって口にしていた「スポーツ文化」という言葉も、「労働ではない時間(余暇)のなかから実らせたもの」という意味が浮かびあがってくる。

 では、この「定義」は、「プロ」(スポーツを職業にして、金銭的利益を得ている人々)が中心の現代のスポーツにも当てはまるものか?

 そのことについて、再び延々と話し合っていくのだが、そんな作業のなかで、私自身が気付かされたことがあった。

 それは「ジャーナリズム」の反対語は「アカデミズム」だ、ということである。

 毎日毎日、次々と新しい情報を送り出し、解説や批判を加えるのが「ジャーナリズム」。それに対して「アカデミズム」は時間をかけてじっくり考える。もちろん、そのどちらもが、スポーツにかぎらず、あらゆる事柄に必要なものといえるだろう。

▲PAGE TOP
バックナンバー

ランニングの歴史と魅力を伝える〜トル・ゴタス著『なぜ人は走るのか:ランニングの人類史』(筑摩書房)

読者からの質問への回答

『マーラーの交響曲』発売記念エッセイ〜いつか私の時代が来る、とマーラーは言った。

祇園町の電器屋の初荷

権力志向者がジャーナリストになる危険性――魚住昭『渡邉恒雄 メディアと権力』講談社

かつてラグビーは日本中を湧かせた!(上岡伸雄・著『釜石ラグビー栄光の日々松尾雄治とくろがねのラガーたち』中央公論社)

日本文化「大相撲」は「スポーツ」なのか?

オペラ(音楽)とスポーツの濃密な関係

塾や予備校は学校より大事?

「新道」という名前が消える寂しさ

孤立化、個別化する社会のあり方に警告(杉本厚夫『「かくれんぼ」ができない子どもたち』ミネルヴァ書房)

女心・男心…人間を描くため、肉体を描ききった本物の作家(虫明亜呂無『パスキンの女たち』清流出版)

松本修『「お笑い」日本語革命』(新潮社)書評「みたいな。」の元祖はとんねるずか!?

犬好き男の愛猫記

大魔神を巡る見事な「知的探検の旅」/小野俊太郎・著『大魔神の精神史』(角川ONEテーマ21)

企業の「所有物」と化したスポーツ・文化団体

スポーツ番組作りの「プロ」になっていただくために

「スポーツ放送はどうあるべきか?」を考える前に、考えるべきこと

書評『茶の世界史』/茶が映し出す過去の世界史&茶が匂わせる未来社会

思い出すのは仕事をしている姿

脳出血と恐怖心

現代社会の「怪物性」を説き明かす見事な一冊〜小野俊太郎・著『フランケンシュタイン・コンプレックス 人間は、いつ怪物になるのか?』青草書房

「劣等感・コンプレックス」とは、本当はどんなものなのか

あけましておめでとうございます

脳出血から復活できた理由(わけ)

「何か」を表現しようとする究極の本能

天職人〜あとがき

そばは京都にかぎる

総選挙の行方とスポーツ界

小泉首相の「趣味」と「文化政策」

行きつけの店は恋人に似てる?

アイ・ラヴ・サッポロ!アイ・ラヴ・ホッカイドウ!

日本文化の「型」と「カタヤブリ」と「カタナシ」の関係を横綱・朝青龍の「カタチ」から読み解く。

いま、ベネズエラで起きている「大事件」

「文化」の持つ本当の力

あけましておめでとうございます

煩悩の世界史〜『要約世界文学全集』(木原武一・著/新潮社)

「夢かうつつか…」逝った者へ…、残された者は…

オリンピックはスポーツではない

「天才」の多くなった世の中

『二十五時』との数奇な出逢い

わたしは猫になりたい。

紅旗征戎不有吾事 金は天下の周りの持ちもの…

アメリカ珍道中〜This is American Way

仕事人間の弁明

変わらないことの素晴らしさ

<二人袴>

女人狂言『茶壺 de Hermes』

私の行きつけの店・好きな店

島田雅彦vs玉木正之 ドイツW杯特別対談「選手を自由にさせたら高校生になっちゃった」

あけましておめでとうございます

個人的パラダイム・シフトに導かれた三冊

ゴシック・万博・ストリップ・吉本…を読む

現代と未来の世界を考えるうえでの「真の世界史情報」(井野瀬久美恵・著『興亡の世界史16 大英帝国という経験』)

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第3弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第2弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第1弾!

知識や情報なんて、ないほうがいい

現代日本人必読の一冊

タクシーと自家用車の違い

「天才」って何? ――まえがきにかえて

「ある女の一生」

「戦争映画」が好きな理由(わけ)

とかく京都のスポーツマンは……

道はどれほど重要なものか

祇園町の「生活」=「文化」

地獄八景万之丞乃戯(じごくばっけいまんのじょうのたわむれ)

わたしは猫になりたい。

読書日記〜稲垣足穂から梅原猛まで

アッピア街道に乾杯(ブリンディシ)!

「質より量」の読書は「質」が残る?

スポーツは究極の道楽?

久しぶりに「銀ブラ」でもするか・・・

行きつけの店は恋人に似てる?

権力志向者がジャーナリストになる危険性――魚住昭『渡邉恒雄 メディアと権力』講談社

ロジャー・パルバース著『旅する帽子』生身のラフカディオ・ハーンが幻想のなかに甦る

作者の名前も作品の題名も消えるほどのノンフィクションの名作〜デイビッド・レムニック著『モハメド・アリ』

戦争と軍隊の歴史

スポーツと音楽を通して出逢ったトリュフ

スポーツ・ジャーナリストにはスポーツよりも大事なものがある?

お薦めの本(2003年夏〜2004年春)

日本人は元気だ――24人の元気な日本人

美しい最後の素晴らしさ

「若い国」アメリカ

京都人の溜息

経済には倫理が必要である

オススメ脳味噌のマッサージ

吉本興業は匈奴である『わらわしたい――竹中版正調よしもと林正之助伝』竹中功・著/河出書房新社

虚実の皮膜――『イッセー尾形の都市カタログPART2』イッセー尾形/森田祐三・共著 早川書房・刊

胡散臭さ礼賛――竹内久美子『賭博と国家と男と女』(日本経済新聞社)

衝撃的な笑劇――レイ・クーニー『笑劇集』劇書房

翻訳って何?――『翻訳史のプロムナード』(辻由美・著/みすず書房・刊)

脳細胞の組み替え――『世界史の誕生』岡田英弘・著/筑摩書房(現・ちくま文庫)

長老の話――堀田善衛・著『めぐりあいし人びと』を読んで

古典の楽しさ

ドリトル先生 不思議な本

京都が消える

嬉しいこと――喜びは常に過去のもの

野村万之丞 ラジカルな伝統継承者(2)

野村万之丞 ラジカルな伝統継承者(1)

事典・辞典・字典・ジテンする楽しみ(第5回=最終回)

事典・辞典・字典・ジテンする楽しみ(第4回)

事典・辞典・字典・ジテンする楽しみ(第3回)

事典・辞典・字典・ジテンする楽しみ(第2回)

事典・辞典・字典・ジテンする楽しみ(第1回)

先達はあらまほしきか?

旅の衣は篠懸(すずかけ)の

パチンコと飢餓海峡

最近の映画はつまらない?いや、やっぱり、映画はおもしろい?

神道、天皇、韓国・・・を読む。

はかなく、素晴らしい、味わい

京の祇園の極私的元服之儀

コースケ(野村万之丞)の遺言

ミレニアム歳末読書日記 楽しい世紀末

お金と勉強

親父ゆずりの数学好き

わたしの本棚(4) スポーツを読む

わたしの本棚(3) 祭りの原型

わたしの本棚(2) ドラマの感動

わたしの本棚(1) 振動する快楽

夏休み読書日記/スポーツ・身体・ジャーナリズム

銀行は痰壺処理会社

親父の隠したエロ小説

野村万之丞――伝統と格闘するパワー

女が動く時代、男は思索せよ

バック・オーライ

二十五時――わたしの好きな世界文学

「私の京都」

わたしの東京体験

SPレコードは生演奏と同じ〜蓄音機にはまってしまった!

感銘した一冊の本〜鈴木隆『けんかえれじい』

「情報過多時代」の楽しみ方

内面より外面

不味いものが食いたい!

ああ、肩が凝る。

父の勲章

京の昼寝

祇園町の電器屋の初荷

Copyright (C) 2003-2011 tamakimasayuki.com. All Rights Reserved. Produced by 玉木正之HP制作委員会. ホームページ制作 bit.
. 『カメラータ・ディ・タマキ』HOMEへ戻る