コラム「ノンジャンル」
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掲載日2004-11-29

この原稿は、昨年(2003年)雑誌『室内』(工作社)のコラム「百家争鳴」に寄稿したものです。スポーツジャーナリスト実践塾第U期を開講したのを記念して(笑)“蔵出し”します。

お金と勉強

 今年(2003年)の3月から角川書店のスポーツ雑誌『スポーツ・ヤァ!』編集部の協力を得て、『スポーツ・ジャーナリスト養成塾』という私塾をはじめた。
  後進の指導というほどのものではないが、齢(よわい)五十を超え、スポーツライターという言葉がまだ認知されてないころからスポーツライターを名乗った人間として、三十年近くにわたっての活動から会得したものを若いひとたちに伝えたくなったのである。

 それに、2年間ほどある総合大学の客員教授としてスポーツ・ジャーナリズム論の講義を行ったときに、少しばかり苛立ちが募ったこともきっかけとなった。
  学生の一般教養として授業を行っても、どうも暖簾に腕押しというか、反応が鈍い。どうせならプロをめざすスポーツ・ジャーナリスト志望者に対して、より実践的な授業をしたい、と思ったのである。

 そこで雑誌とインターネットで入塾希望者を募集したところが、五十人も集まってくれれば嬉しいと思っていたのに、なんと250人を超える応募があった。北は札幌から南は那覇まで。九州からも10名近く。関西からは30名以上の入塾希望者があった。
  いまさらながらに昨今のスポーツにたいする関心の高さに驚かされたものの、とても全員を受け入れるわけにはいかず、80名に絞って授業を開始した。

 学生とは違い、さすがに「プロ志望者」は熱心で、座席は前から埋まり、欠席者はほとんどなく、質問をすると7割から8割の塾生が手を挙げる。レポートやエッセイといった文章の提出を要請すると、単位や資格とはまったく無縁であるにもかかわらず、6割以上の塾生が提出する。

 これは生半可な気持ちではいけないと、こちらも気合いを入れ直し、あらためて講義のためのメモをつくりなおしたり、資料を調べなおしたり。さらにラグビー日本代表チームの前監督である平尾誠二氏に来てもらって「模擬記者会見」を開き、塾生にインタビューの練習をさせたり、ジャーナリストの高野孟氏を招いて、日本のジャーナリズム界についての教えを請うたり・・・。

 しかし、月に一度、半年間の授業があっという間に最終回を迎えようとしている現在、わたしの心の奥には、ふたたび苛立ちのようなものが募りはじめた。
  というのは、どう考えても、塾生よりもわたし自身のほうが、より「勉強」になっていると思われてならないのである。
  講義で話すことをまとめなおしていると、スポーツにたいする考え方もあらためて整理できる。塾生の文章を添削していると、自分の文章修行になる。はたしてわが塾は、わたし以上に塾生のための「勉強」になっているのだろうか?

 しかし、これは考えてみれば当然といえるかもしれない。なぜなら「金を出す人間」と「金をもらう人間」では、圧倒的に後者のほうが努力をするに決まっているのだから。
  わが塾生も早くこの真理に気づき、「金を出す」のではなく、「金をもらう」側の人間になってほしいものだが・・・。

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