コラム「ノンジャンル」
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掲載日2006-08-07

この原稿は、『自分時間』(「コミック乱」別冊2005年6月号)の「コラムで遊ぶ」という連載に書いたものです。前回と同様、この雑誌が休刊してしまったので、ここに“蔵出し”します。

スポーツは究極の道楽?

 いろんな種類のパターやドライバーを次々と買いそろえ、毎晩夕食後にニヤニヤ笑いながら磨いている男がいる。もちろん週末になると、朝早く家を飛び出し、そのなかの逸品をクルマに積んでゴルフ場へ出向く。

 誰の周囲にも、そんなふうに「ゴルフ道楽」に興じている男が一人はいるものだ。ひょっとして、あなた自身がそうかもしれない。わたしはゴルフをやらないので、その愉しみがわからない。が、「蓼食う虫も好きずき」という言葉もある。他人の趣味をあれこれいうつもりはない。

 ゴルフはもちろんスポーツの一種で、スポーツの原点は「遊び」だから、「スポーツ道楽」という言葉があってもよさそうなものだが、「ゴルフ道楽」とはいいえても、「スポーツ道楽」という言葉は耳にしたことがない。

 サッカー日本代表の試合を追いかけ、ヨーロッパや中国はもちろん、貯金をはたいてイランやバーレーンにまで応援に行ったり、会社を辞めてまでワールドカップを見に行く・・・というのは、あきらかに「サッカー道楽」と呼びうる行為だが、そういう言葉が使われることはない。それは、日本代表チームをサポートし、応援しているという「大義名分」が存在しているからだろう。

 わたしの友人に、瓢箪を育てることを趣味にしている男がいる。
 大きな瓢箪を育てるには大量の肥料と土の管理が必要らしく、育てあげてから中味を抜いて乾かして磨きあげる作業もふくめ、大変な手間暇と金がかかるそうだ。その友人に向かって「瓢箪道楽」というと、彼は笑ってうなずくが、日本代表チームを応援している人に向かって「サッカー道楽」などというと叱られそうな気がする。

 毎日ジョギングをしたり、週末にテニスを楽しんでいる人に対しても「スポーツ道楽」という言葉は使いにくい。それは、健康のためという、これまた「大義名分」が存在しているからだろう。そこまで大袈裟でなくとも、何か意味のありそうなものは、「道楽」とはいえないようだ。

 なかには本当にサッカーが好きで、日本代表を応援するのでなく、イングランドのプレミア・リーグやスペインのリーガ・エスパニョーラやイタリアのセリエAの試合を見に行く人もいる。あるいは野球が大好きで、アメリカへ何度も渡ってメジャーリーグの試合を観戦する人もいる。が、彼らや彼女らに向かって「スポーツ道楽」とか「野球道楽」といった言葉が使われることはない。

 そういえば、わたしの友人にスキーが大好きで金を貯めてはスイスやアラスカ、オーストラリアやニュージーランドに渡る男がいる。が、彼にも「スキー道楽」という言葉を使うのは気が引ける。それは、世界各地の高峰を制覇しようとする登山家や世界一周を試みるヨットマンなどと同様・・・とまではいえないまでも、いくらかの危険を冒して何かにチャレンジしようとしているからだ。

 瓢箪が家計に大きなダメージを与えることはあっても、命に関わることはない。身体を傷つけることもない。が、(ゴルフなどを除く)多くのスポーツは身体の限界に挑み、ぶつかり合い、その結果傷つくことが珍しくない。ときには命に関わることさえある。

 そのような身体に関わる行為を行ったり、その行為を見るという行為は、「道楽」と呼ぶにはあまりに真剣すぎるのかもしれない。
 いや、そこまで真剣なだけに、スポーツは「究極の道楽」つまり「極道」といえるような気もするのだが・・・。

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