コラム「音楽編」
HOMEへ戻る
 
表示文字サイズ選択:
標準
拡大
掲載日2004-12-13

この原稿は、2000年2月に、都はるみさんが新日本フィルハーモニー管弦楽団をバックに、墨田トリフォニーホールで行ったコンサートのパンフレットに寄稿したものです。ところが、このときは何か突然の所用が生じて、コンサートを聴きに行くことができなくなった。今月(12月)都はるみさんは、新宿コマ劇場で「シリーズ・ニッポンの歌『新歌謡』」と題したコンサートを開催する(15〜26日)。が、いろいろ事情が生じてしまい、まったく残念なことだが、どうやらこのコンサートには足を運べそうにない。そこで、以前にも同じようなことが・・・と思い出し、ここに“蔵出し”します。

都はるみさんの「世界」との新たな出逢い

 『最新・世界地図の読み方』(高野孟・著/講談社現代新書)という本を読みながら、ふと、都はるみさんの歌を思い浮かべた。
  この本は、世界地図を縦にしたり横にしたり斜めにしたりして眺めてみると、いつもとは「違った世界」が見える――ということを実践的に面白く解説した本なのだが、なかでも、世界地図を横に向け、西を上(ヨーロッパを上)、東を下(日本をいちばん下)にして眺めてみる、という見方が面白かった。

 そうすれば、日本列島が『ユーラシア大陸という巨大なパチンコ台の受け皿のような位置にあることがわかる』というのだ。
  イギリスやフランスやイタリアから落下しはじめたパチンコ球は、アラブ諸国やインド、あるいはロシアやモンゴルや中国を経由して東南アジアや朝鮮半島にたどりつき、最後に日本列島という「受け皿」に流れ込む。
  もちろん、じっさいに流れ込んだのはパチンコ球ではない。それは「文化」である。シルクロードや海を通って、世界中のあらゆる文化が日本列島に流れ込んだ。音楽という文化も――。

 古代のヘブライ音楽やイスラム教のコーランの詠唱、さらにジャワ島のガムランやモンゴルのホーミーと呼ばれる音楽が、どのように日本の民謡や義太夫、浪曲や演歌に影響をおよぼしたか、ということについて、ここで詳述する余地はない。が、そんなことは、都はるみさんの歌を聴けば、わかることだ。

 はるみさんのうたう歌には、東南アジアのエスニックな香りの漂うものや、広大な大陸の空気を感じさせるものがある。さらに、ルンバやマンボ、スイング・ジャズ調のものもある。そして、はるみさんのうたうコブシやウナリは、彼女自身のオリジナリティにあふれた技術であるにもかかわらず、はるかに遠い異郷――まだ見ぬ故郷を感じさせるようなノスタルジックな深い響きがある。

 そうなのだ。都はるみさんの小さな身体のなかには、すべての音楽の「世界」が詰まっているのだ。だから、わたしたちは、心の奥の深いところで魂を揺さぶられるのだ。
  そんな都はるみさんが、今宵はフル・オーケストラと共演するという。ヨーロッパで独自に発展した音楽文化の粋である管弦楽団に、西洋キリスト教文化とともに発展した楽器であるパイプ・オルガンまで加わり、東洋の歌姫のコブシとウナリのバックを務めるという。
  都はるみさんの「世界」が、新たな出逢いをする。ユーラシア大陸の両端が手を結んだ音楽とは、いったい、どんな響きがするのだろう?
  わたしは、開演のベルを聞く前から、昂ぶる興奮を抑えきれないでいる。

▲PAGE TOP
バックナンバー


蔵出し新着コラム

トリエステ・オペラの魅力〜イタリア・オペラの神髄

玉木正之の『オペラはやっぱりオモロイでぇ』 第15期「オペラで世界文学全集!」

玉木正之のオペラへの招待 大人の恋の物語『メリーウィドウ』

『ジャンニ・スキッキ』の舞台は京都?

クラシック音楽ファン、オペラ・ファンは、なぜDVDに狂喜しているのか?

「不〜倫火山」大爆発!善男善女の皆さんも、煩悩まみれの皆さんも、みんな一緒に御唱和ください!「不倫、不倫、不倫、フリ〜ン!」

クラシック・コンサートは「真に新しい音楽」に触れる場所

オペラとは男と女の化かし合いを楽しむもの

50歳からのホンモノ道楽

『オペラはやっぱりオモロイでぇ』第14期「オペラ掘り出しモノ!」

山下洋輔ニュー・イヤー・コンサート ヨースケ&サド緊急“生”記者会見!『いま明かされる!反則肘打ち事件の真相』

「ベートーヴェンの交響曲」その名声と誤解

ベートーヴェンの「圧倒的感動」

ファジル・サイの魅力

スポーツは音楽とともに――フィギュアスケートはオペラとともに

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第3弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第2弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第1弾!

天才少年ヴィトゥスとテオと音楽と……

『オペラはやっぱりオモロイでぇ』第13期「オペラは、ゼッタイ演出に注目!」

<演歌 de おぺら(エンカ・デ・オペラ)>上演企画書

『指揮者列伝』ミニミニ・ダイジェスト「カラヤン・ゲルギエフ・セラフィン・バーンスタイン」

あけましてフリー漫才

男の子がヴァイオリンを弾くのは恥ずかしいことだった・・・?

『オペラはやっぱりオモロイでぇ』第12期「オペラは、祭りだ! お祭りだ!」MUSIC FESTIVALS IN THE WORLD

革命的斬新さを失わない音楽――それがクラシック

いつの世も変わらない「親子」と「男女」

日本ポップス史講座アンケート

待ち焦がれた“パリジャン”の本領

「浪漫派ベートーヴェン」を存分に楽しませてくれた演奏に心から拍手

音楽家はいかにして演奏に心をこめるのか?

JAZZとテツガク

ソロ(孤高)を求めてバンド(連帯)を怖れず!

我が「師匠」福島明也の魅力

城之内ミサ『華Uroad to OASIS』「ジャンル」を超えた素晴らしい音楽

懐かしい空間の響き

佐渡&玉木のぶっちゃけトーク

五嶋龍―「神童」の生まれ出る一瞬

ヤッタリーナ!ガンバリーナ!イタリーア!

スポーツと音楽――その親密な関係

アメリカのスポーツとアメリカの音楽

フィリッパ・ジョルダーノの魅力〜フィリッパの歌はイタリアの味

「私の好きな音楽」身体で感じる世界

玉木正之の『オペラはやっぱりオモロイでぇ』第10期「オペレッタを楽しもう!」

リヒャルト・シュトラウスのオペラは宝塚にふさわしい

日本人は「万葉集」以来「歌とともに生きている」

東方の奇蹟の二重唱

永遠の歌声

「原点回帰」の「山下洋輔ニュー・イヤー・コンサート2006」に贈る新春お笑い寄席 新作古典落語『人生振出双六』

20世紀最高の「歌役者」

クルマとラジオ

世界は演歌に満ちている

バーブラは諸行無常の響きあり

最高の「日本オペラ」

タイムマシンと冷戦時代

ニッポンは明るい!

春の祭典

シャンソンは高級?

イタリアはイタリア

ジャズはサッカー?

世界はひとつ?

大事なのは、質より量?内面より外見?

ビートルズはわかる?

無人島で聴く最後の歌

歌は世に連れない

クレオ・レーンの学歴

ひばりの川流れ

NASAと蓄音機

日本人の遊び心

「革命的音楽」は時代とともに消えてゆく?

究極のノスタルジー

『プロの仕事』

佐渡&玉木のぶっちゃけトーク(最終回)

「映画を所有したい!」と思うのは何故?

討ち入りや ゑひもせすまで ジャズに酔ひ――『ジャズマン忠臣蔵』講釈・前口上

ゲルギエフの引き出す無限の可能性/偉大な芸術とは、オモロイもんである。

冬の夜長にオペラ――その極上の面白さをDVDで味わう

都はるみさんの「世界」との新たな出逢い

天国の大トークバトル『クラシック あとは野となれ ジャズとなれ!』

超虚構音楽史―山下洋輔作曲「ピアノ・コンチェルト」の世紀の一戦

男と女の愛の形――悪いのはどっち?

「世の中に新しきものナシ」あらゆる創作はパクリである?

モーツァルトのオペラのおもしろさ

人を愛し、未来を信じ、時代を超越するパワー

バーンスタイン『キャンディード』の単純明快な世界

いつの世も変わらない「親子」と「男女」

<演歌 de オペラ>上演企画書

カルロス・クライバー〜〜実体験なき体験/〜夢のような体験

歌うピアニスト ―― G&G(グルダとグールド)

グレン・グールド<ガラス=音楽=グールド>

『ブルース・ブラザース』讃

翔べ! 21世紀へ!「エレクトリック・クラシック」の翼に乗って!

サロメ――官能と陶酔の神話の魅力

神野宗吉(ジャンニ・スキッキ)の娘・涼子(ラウレッタ)のアリア『好きやねん、お父ちゃん』(『私のお父さん』)

「子供(jr)」という大発見

NHK-FM『クラシックだい好き』 1〜6回プログラム

島田雅彦のオペラと小説――『バラバラの騎士』と『どんな? あんな?こんな? そんな!』

「オペラ忠臣蔵」のテロリズム

フリンオペラ年表400年史『オペラの歴史はフリンの歴史』

極私的ワーグナー体験の告白『私は如何にしてワーグナーの洗脳を解かれたか?』

ベートーヴェンの「朝ごはん」

サッカーと音楽の合体――それがスポーツ!それがワールドカップ!

オペラ「アイーダ」の本当の魅力

ヨースケのことなら何でもワカル!『ヤマシタ・ヨースケ・ジャズ用語大辞典』遠日発売未定 内容見本

Copyright (C) 2003-2008 tamakimasayuki.com. All Rights Reserved. Produced by 玉木正之HP制作委員会. ホームページ作成/WEBサイト制作 bit-ビット- bit.
『カメラータ・ディ・タマキ』HOMEへ戻る