コラム「音楽編」
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掲載日2007-02-05

この短文は、2004年にジャパンアーツが招聘したスロヴァキア歌劇場来日公演『椿姫』の宣伝パンフレットに寄稿したものです(ヴィオレッタ=マリア・グレギーナ、アルフレード=エーター・ドヴォルスキー、指揮=現田茂夫)。ライナーノート・シリーズが終わったので、パンフレット・シリーズでも始めようかと思って“蔵出し”します。もう既にけっこうたくさん出してるし、続くのかなあ・・・(笑)。

いつの世も変わらない「親子」と「男女」

 オペラは高級で難解なもの・・・といった間違った先入観を抱いている人がまだまだ多いなかで、オペラほど楽しく面白く理解しやすいものはない(なにしろ、男女の愛の物語に美しい音楽まで付いているのだから)という主張を口にし、書き続けてきた私だが、最近はその考えが少々変化し、オペラはやっぱり難しい、と思うようになってきた。

 たとえば『椿姫』。
 パリの高級娼婦ヴィオレッタに一目惚れしたアルフレード。それを父のジェルモンが咎(とが)める。しかし、息子は父親のいうことを聞かない。
 いつの世も変わらない親子の断絶。嗚呼、難しい・・・。

 おまけに、娼婦のヴィオレッタが美しい心の持ち主で、真剣にアルフレードを愛してる。けど、父親はその愛を許せない。いや、本心では許したくても、世間体が許さない。
 いつの時代も変わらない社会の柵(しがらみ)。嗚呼、難しい・・・。

 こんな「難解な問題」は、餓鬼には到底わからない。まっとうな大人にしか理解できない。いや、理解できても解決できない。
 親と子の関係、男と女の愛の形は、それほどまでに難しい。

 ならば、ただただ涙を流して、アルフレードやジェルモンの苦悶(くもん)を、ヴィオレッタの悲しみを、見守るほかない。
 ヴェルディの美しい音楽が、その涙を誘(いざな)う。
 嗚呼、オペラは素晴らしい!

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