コラム「音楽編」
HOMEへ戻る
 
表示文字サイズ選択:
標準
拡大
掲載日2007-12-12

この原稿は、指揮者の金聖響さんとの共著で11月20日に発売され、早くも4刷の重版となった『ベートーヴェンの交響曲』(講談社現代新書)の「まえがき」として書いたものの抜粋です。“蔵出し”というわけではないですが、宣伝のために“チョイ出し”します(笑)。まだお買い求めでない方、まだお読みでない方は、是非とも書店へ走ってください。音楽ファンの方にも、ベートーヴェンなんかちょっとしか興味がないという方にも、中味が面白いことは保証します!

ベートーヴェンの「圧倒的感動」

BOOK
『ベートーヴェンの交響曲』(講談社現代新書)
11月20日発売!『ベートーヴェンの交響曲』(講談社現代新書)

 ベートーヴェンの交響曲を初めて聴いたのは、いまから半世紀近く前、小学校の低学年ころのことでした。自宅が電器屋だったので、店には最新式のステレオ装置があり、それには販売促進用に試聴盤の33回転17センチEPレコード(といっても最近の若い人には何のことかわからないかもしれませんが)がついていました。店に客がやって来ると、そのレコードがかけられます。そのときスピーカーから流れ出た♪ジャジャジャジャ〜ン……という音は、いまも忘れることができません。

 生まれて初めて経験した、音楽による衝撃。そのとき私は、子供心にも、何やら得体の知れないとてつもなく巨大なものに出逢ったような気がしました。その演奏が、ベートーヴェン作曲の交響曲第五番『運命』といわれているもので、フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団の演奏によるものだと知ったのは、それから1年くらい経ってからのことでしたが、以来、ベートーヴェンには、何度も何度も衝撃を与えられ続けました。

 ♪ジャジャジャジャ〜ン…の音楽が、けっして3分足らずで終わるものではなく、そのあとも5分くらい続き、それもまた迫力にあふれていたこと…。しかも、そのあとにも音楽はつづき、最後のフィナーレが最初の♪ジャジャジャジャ〜ン以上に、感動的だったこと…。さらに、指揮者やオーケストラによって、いろいろとテンポが変わったり、繰り返しがあったりなかったり、ピッコロやコントラバスの響きを強調する指揮者と、あまり強調しない指揮者がいること…など。そして『運命』以外にもベートーヴェンには素晴らしい交響曲が全部で9曲もあること……などなど。

 その後、レイ・チャールズやビートルズに感激したり、ワーグナーのオペラにのめり込んだり、バッハとモーツァルトさえあれば他の音楽はいらないと思ったり、これこそ最先端の音楽だと信じてモダン・ジャズばかり聴いたり、筒美京平はおもしろいじゃないか、都はるみは凄いじゃないか……などと思った時期もありました(まったく青春とは、心があっちやこっちへ揺れ動くものです)が、ベートーヴェンの交響曲だけは、いつも自分の近くにありました。
そしてもちろん、暇さえあればいろんな音楽に耳を傾けている現在も、ベートーヴェンの交響曲は常にわたしの傍にあり、衝撃を与え続けてくれています。

 どんな音楽に心をふるわせられても、いつか必ず、ベートーヴェンの交響曲に帰る。なぜか、ベートーヴェンの交響曲に帰ってしまう。聴きたくなってしまう。そして、よくもこれほど完成された素晴らしい音楽を残してくれたものだと、繰り返し驚く。聴くたびに新しい驚きと発見に興奮させられる……。

本書は、そんなベートーヴェンの交響曲を、もっと楽しみたい、もっと深く味わいたい、もっとたくさん驚きたいと思ったわたし(玉木)が、そのきっかけを与えてくれるのに最もふさわしい人物である指揮者(金聖響さん)にお願いして、講義してもらったなかから生まれた一冊です。

      <中略>

 その前に……。本書の巻末に、ベートーヴェンに関する年表(ベートーヴェン《激動の時代の激動の生涯》年表)をつけておきました。
フランス革命とナポレオン戦争、アメリカ独立革命、そして産業革命を促す数々の科学的発明と発見。ベートーヴェンの生きた18世紀末から19世紀(1770〜1827)は、まさに、「疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドゥランク)」の「激動の時代」と呼ぶにふさわしいエネルギーに満ちた混乱のなかで、古い体制(絶対王政)が打ち破られ、新しい時代(近代市民社会)へと激変する過渡期の時代でした。

 一方、その時期の日本社会は、徳川幕府による寛政の改革から、田沼意次による商業重視の政策への変化によって社会が活性化し、浮世絵、歌舞伎、読本など、江戸文化(化政文化)が大きく花開くなかで、外国船が次々と日本を訪れ、次の時代(幕末から維新)への蠢動が始まった時代でした。
そんなところをちょっと頭に入れたうえで、マエストロの話を聞けば、ベートーヴェンの音楽を、もっとおもしろく楽しく味わえるようにも思います。

      <中略>

では、金聖響さん、どうぞ……!
<というわけで、以下は書店でお買い求めのうえ、是非ともご一読ください>

▲PAGE TOP
バックナンバー


蔵出し新着コラム

トリエステ・オペラの魅力〜イタリア・オペラの神髄

玉木正之の『オペラはやっぱりオモロイでぇ』 第15期「オペラで世界文学全集!」

玉木正之のオペラへの招待 大人の恋の物語『メリーウィドウ』

『ジャンニ・スキッキ』の舞台は京都?

クラシック音楽ファン、オペラ・ファンは、なぜDVDに狂喜しているのか?

「不〜倫火山」大爆発!善男善女の皆さんも、煩悩まみれの皆さんも、みんな一緒に御唱和ください!「不倫、不倫、不倫、フリ〜ン!」

クラシック・コンサートは「真に新しい音楽」に触れる場所

オペラとは男と女の化かし合いを楽しむもの

50歳からのホンモノ道楽

『オペラはやっぱりオモロイでぇ』第14期「オペラ掘り出しモノ!」

山下洋輔ニュー・イヤー・コンサート ヨースケ&サド緊急“生”記者会見!『いま明かされる!反則肘打ち事件の真相』

「ベートーヴェンの交響曲」その名声と誤解

ベートーヴェンの「圧倒的感動」

ファジル・サイの魅力

スポーツは音楽とともに――フィギュアスケートはオペラとともに

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第3弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第2弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第1弾!

天才少年ヴィトゥスとテオと音楽と……

『オペラはやっぱりオモロイでぇ』第13期「オペラは、ゼッタイ演出に注目!」

<演歌 de おぺら(エンカ・デ・オペラ)>上演企画書

『指揮者列伝』ミニミニ・ダイジェスト「カラヤン・ゲルギエフ・セラフィン・バーンスタイン」

あけましてフリー漫才

男の子がヴァイオリンを弾くのは恥ずかしいことだった・・・?

『オペラはやっぱりオモロイでぇ』第12期「オペラは、祭りだ! お祭りだ!」MUSIC FESTIVALS IN THE WORLD

革命的斬新さを失わない音楽――それがクラシック

いつの世も変わらない「親子」と「男女」

日本ポップス史講座アンケート

待ち焦がれた“パリジャン”の本領

「浪漫派ベートーヴェン」を存分に楽しませてくれた演奏に心から拍手

音楽家はいかにして演奏に心をこめるのか?

JAZZとテツガク

ソロ(孤高)を求めてバンド(連帯)を怖れず!

我が「師匠」福島明也の魅力

城之内ミサ『華Uroad to OASIS』「ジャンル」を超えた素晴らしい音楽

懐かしい空間の響き

佐渡&玉木のぶっちゃけトーク

五嶋龍―「神童」の生まれ出る一瞬

ヤッタリーナ!ガンバリーナ!イタリーア!

スポーツと音楽――その親密な関係

アメリカのスポーツとアメリカの音楽

フィリッパ・ジョルダーノの魅力〜フィリッパの歌はイタリアの味

「私の好きな音楽」身体で感じる世界

玉木正之の『オペラはやっぱりオモロイでぇ』第10期「オペレッタを楽しもう!」

リヒャルト・シュトラウスのオペラは宝塚にふさわしい

日本人は「万葉集」以来「歌とともに生きている」

東方の奇蹟の二重唱

永遠の歌声

「原点回帰」の「山下洋輔ニュー・イヤー・コンサート2006」に贈る新春お笑い寄席 新作古典落語『人生振出双六』

20世紀最高の「歌役者」

クルマとラジオ

世界は演歌に満ちている

バーブラは諸行無常の響きあり

最高の「日本オペラ」

タイムマシンと冷戦時代

ニッポンは明るい!

春の祭典

シャンソンは高級?

イタリアはイタリア

ジャズはサッカー?

世界はひとつ?

大事なのは、質より量?内面より外見?

ビートルズはわかる?

無人島で聴く最後の歌

歌は世に連れない

クレオ・レーンの学歴

ひばりの川流れ

NASAと蓄音機

日本人の遊び心

「革命的音楽」は時代とともに消えてゆく?

究極のノスタルジー

『プロの仕事』

佐渡&玉木のぶっちゃけトーク(最終回)

「映画を所有したい!」と思うのは何故?

討ち入りや ゑひもせすまで ジャズに酔ひ――『ジャズマン忠臣蔵』講釈・前口上

ゲルギエフの引き出す無限の可能性/偉大な芸術とは、オモロイもんである。

冬の夜長にオペラ――その極上の面白さをDVDで味わう

都はるみさんの「世界」との新たな出逢い

天国の大トークバトル『クラシック あとは野となれ ジャズとなれ!』

超虚構音楽史―山下洋輔作曲「ピアノ・コンチェルト」の世紀の一戦

男と女の愛の形――悪いのはどっち?

「世の中に新しきものナシ」あらゆる創作はパクリである?

モーツァルトのオペラのおもしろさ

人を愛し、未来を信じ、時代を超越するパワー

バーンスタイン『キャンディード』の単純明快な世界

いつの世も変わらない「親子」と「男女」

<演歌 de オペラ>上演企画書

カルロス・クライバー〜〜実体験なき体験/〜夢のような体験

歌うピアニスト ―― G&G(グルダとグールド)

グレン・グールド<ガラス=音楽=グールド>

『ブルース・ブラザース』讃

翔べ! 21世紀へ!「エレクトリック・クラシック」の翼に乗って!

サロメ――官能と陶酔の神話の魅力

神野宗吉(ジャンニ・スキッキ)の娘・涼子(ラウレッタ)のアリア『好きやねん、お父ちゃん』(『私のお父さん』)

「子供(jr)」という大発見

NHK-FM『クラシックだい好き』 1〜6回プログラム

島田雅彦のオペラと小説――『バラバラの騎士』と『どんな? あんな?こんな? そんな!』

「オペラ忠臣蔵」のテロリズム

フリンオペラ年表400年史『オペラの歴史はフリンの歴史』

極私的ワーグナー体験の告白『私は如何にしてワーグナーの洗脳を解かれたか?』

ベートーヴェンの「朝ごはん」

サッカーと音楽の合体――それがスポーツ!それがワールドカップ!

オペラ「アイーダ」の本当の魅力

ヨースケのことなら何でもワカル!『ヤマシタ・ヨースケ・ジャズ用語大辞典』遠日発売未定 内容見本

Copyright (C) 2003-2008 tamakimasayuki.com. All Rights Reserved. Produced by 玉木正之HP制作委員会. WEBサイト制作 bit.
『カメラータ・ディ・タマキ』HOMEへ戻る