コラム「スポーツ編」
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掲載日2007-12-12

サッカー日本代表チームに岡田監督就任!そこで、いまでは(まったく残念なことに!)廃刊となってしまったスポーツ雑誌『スポーツ・ヤァ』(2004年6月のワールドカップ・ドイツ大会開催時の特別号)で5回に渡って行った岡田武史氏と連続対談を“蔵出し”します。第1回は日本代表がオーストラリアに大逆転負けを喫した直後の対談です。ここには岡ちゃんのサッカー代表チームとワールドカップに対する考え方が…。

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談
第1回「追加点を取るという国際的意識に欠けていた」

玉木 オーストラリア戦は本当に残念な結果になってしまいました。

岡田 本当にねえ…。前半はいまひとつ試合の組み立て方に関する意識が統一されずに、ゆっくり攻めてカウンターを受ける悪い内容だったのに1対0でリード。逆に後半は相手が焦ってパワープレイを仕掛け、それも真ん中ばかりに集まる攻撃を繰り返し、得点できずに疲れも出て、日本には何度もカウンターでチャンスが生まれる勝ちパターンになったのに逆転されてしまった。しかも選手の頭のなかが真っ白になってるなかで3失点。

玉木 サッカーの怖さ、恐ろしさというものを心底教えられたという意味では「ドーハの悲劇」以来の教訓的敗戦に思えます。

岡田 そうですね。僕自身も、この試合はものすごく勉強させられました。後半の何度かのカウンターのチャンスに、あと1点の追加点が入っていれば勝っていた試合なんだけど、サッカーは怖いね。本当に…。

玉木 ドーハの悲劇の時も岡田さんはNHKのスタジオに座っておられましたね。

岡田 2002年の時は勝った試合も解説してたよ。そんな疫病神みたいにいわないでよ(苦笑)。

玉木 失礼。ドイツとの練習試合では、高原が2得点を決めたのですが、この試合ではなぜ決められなかったのでしょう?

岡田 その理由を語るのは難しいけど…、一つには確率の問題で、通算で100本シュートして何本ゴールできるかというフォワード選手の実力に帰する問題といえるかもしれない。その確率がまだまだ低いということ。でも、それ以上に、ここで何が何でも追加点を奪っておかなければ…という強い意識が持てなかったんじゃないかな。

玉木 それは、どういうことですか?

岡田 ゴールのチャンスが何度もあったのは1点リードした後半。相手は何度パワープレイを繰り返しても得点には至らない。時計の針は進む…。そんな状況のなかで、1点のリードではマズイ…、とくにW杯のような国際試合では何が起こるかわからない…、ここではずしたらヤバイ…というような意識にはなれなかったとも思えるね。

玉木 なるほど。逆に1点負けてるオーストラリアは、必死にゴールへ向かってきましたからね。

岡田 まあ、高原と柳沢のプレイ自体は悪くなかったけど、Jリーグを見てもわかるように、結局は決定力のある外国人フォワード選手のいるチームが上位に立ってるんですよ。中盤からゴール前までボールをつないでチャンスをつくることはどのチームもできる。あとは、そのチャンスを最後にドーンと決める選手。前線に二人、決定力のあるフォワードのいるチームが勝つ。最近のサッカーは、もう、それに尽きるんじゃないかな。

玉木 今大会の他の試合を見ていても、オランダのロッベン、コスタリカのワンチョペ、アルゼンチンのサビオラ、ポルトガルのパウレタなど、決めるべき選手が決めてますね。その決定力というのは、技術プラス経験…?

岡田 技術はもちろんだろうけど、フォワード選手の本能というか…、それプラス、チーム全体の経験かな。僕自身、オーストラリア戦の後半で、何度かのカウンターのチャンスをはずしても、日本がこのまま勝てるんじゃないかな…と思ってしまっていたからね。

玉木 私は、今回のドイツ大会は、日本のサッカーにとっての「成人式」だと、以前から考えていました。85年のメキシコ大会予選での韓国戦で初めてW杯というものが少しばかり多くの人に騒がれ、93年にJリーグが誕生し、98年と02年の大会はがむしゃらに乗り切って、さあ今回、どんなに成長した大人の姿を見せてくれるかと期待してたんですが、後半40分までは「大人」だったけど、残り5分で思春期の「ガキ」に戻ってしまった。

岡田 たしかに、いまの代表選手は若い時から国際試合の経験も豊富で、1点を奪われて同点にされるまでは、その経験を生かした冷静な試合運びもできた。僕が監督をしたフランス大会で、ワールドカップといっても同じルールのサッカーなんだから…といって選手を落ち着かせなければならなかった時より、はるかに進歩してる。しかし問題は1点を取られたあとで、1点は奪われたけど、まさか負けるとは誰も考えなかったと思う。そこでもう一度ネジを巻き直して、ここは必死になって立て直さないとヤバイことになると、冷静に自覚することができず、頭のなかは真っ白で、勝ってた試合が引き分けか…という程度の意識のなかで逆転ゴールを奪われてしまった。

玉木 「ガキ」に戻ったのではなく、妙に「大人」ぶった判断をしてしまった…。

岡田 まぁ、せっかくの経験を生かせないくらい、頭のなかが真っ白になってしまったんだろうな…。

玉木 それも、経験不足といえますか?

岡田 さっき「成人式」といったけど、Jリーグが誕生して以来、これほど短期間のうちにサッカーの技術が向上し、人気も爆発的に盛りあがったという国は、他に例がないわけで、日本のサッカーは確実に進歩してきた。けっして世界的に弱くないオーストラリアと、ワールドカップという大舞台で、がっぷり四つに組んだ試合もできるようになったわけです。確実に力がついてきていることはたしかです。ただ、進歩というのは煉瓦を積み上げる作業と同じで、上にばかり積んでいったら、いつかはバタンと倒れてしまう。上だけじゃなくて、必ず横に積まなければならない時期がある。僕が監督のときに初出場を果たして、次に自国開催で一次リーグを突破して、次はやれベスト8だ、ベスト4だと…。そんな具合に上ばかり積もうとすると倒れる時が必ず来る。ユースとかジュニア・ユースとか、Jの各クラブとかをきちんと整備するような、煉瓦を地道に横に積む作業も必要なことをもっと意識しなければ、せっかく積み上げた煉瓦も倒れてしまう。

玉木 ジーコ監督は、アジア予選を勝ち抜いたあと、W杯の目標は優勝といって、その後ベスト4と言い直しましたが…。

岡田 その真意は僕にはわからないし、一次リーグを突破することなど当たり前のブラジルでプレイした人物にとっては当然の発言なのかもしれません。そういえば98年のフランス大会でのジャマイカの監督も「目標は優勝」といってたな(笑)。僕らは目標といえば、達成できそうな現実よりも少し上の位置を…と思うけど、そういう高い目標の言葉が選手をどういう意識に導くのか…。僕にはよくわからない。

玉木 この大会は「煉瓦を横に積む」ことの重要性を気づかせてくれる機会に…?

岡田 いやいや、それをいうのはまだまだ早いですよ(苦笑)。たしかに初戦の敗北で状況としては非常に厳しいものになったけど、あと2試合、月並みな言葉だけど、全力で最後まであきらめないで闘ってほしいですよ。最後の最後まで何が起こるかわからないのがサッカーだと、改めて教えられたんだから。

玉木 そのためには、先発選手を変える必要があるのでは?

岡田 クロアチア戦までの練習での選手の様子とかを見てみないとわからないけど、2トップのフォワードを、ジーコは変えないんじゃないかな。

玉木 野球のWBCも韓国戦2連敗のスタートでしたから、残り2試合期待します。

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