コラム「スポーツ編」
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掲載日2005-03-22

PEOPLE

欽ちゃんと一緒に。

欽ちゃんと一緒に。
photo by 富永智子

この原稿は、外国車輸入会社のヤナセが出しているPR誌『Yanase Life Plaisir』の2005年3〜4月号に寄稿したものです。蔵出しというにはちょっと早いですが、野球シーズン到来を祝って(ちょっと手直しして)蔵出しします。尚、文中に使用した萩本欽一氏のコメントをもっと詳しく読みたい方は、小生のインタヴュー全文が掲載されている『スポーツ・ヤァ!』(角川書店・刊)のバックナンバー(110号/2005年1月21日〜2月3日号)を取り寄せて読んでください。

野球は、なんでこうなるの?

 《大人者不失其赤子心者也》
 大人(たいじん)とはその赤子(せきし)の心を失わざる者なり――孟子の言葉である。
  2月1日、プロ野球のキャンプが始まり、いよいよ「新しいシーズン」が幕を開けたとき、こんな言葉が脳裏を過ぎった。

 昨年、史上初のストライキにまで至った球界再編問題から、東北(仙台)に新規球団、福岡にも新球団、関西(大阪・神戸)に合併球団が生まれ、さて装いも新たになったプロ野球はどうなるのか・・・という興味もあるが、それ以上に、私が注目するのはタレントの萩本欽一さんが創設した「欽ちゃん球団・ゴールデンゴールズ」の動向である。

 プロ野球と同様、2月1日から宮崎で「キャンプ・イン」したが、その前にインタヴューをさせていただいたとき、欽ちゃんは次のような言葉を口にしていた。
 「野球チームって、キャンプをするんですよね。キャンプで一番楽しいことって、何といってもキャンプ・ファイヤーですからね。宮崎の浜辺に木を組んで、火をつけて、みんなで歌を歌いたいですね。♪燃〜えろよ、燃えろ〜よ〜って・・・」

 私は、思わず吹き出してしまった。が、同時に、なるほど・・・とも思った。
 なるほど「キャンプ」とは本来そういうもののはずである。野球の世界では、チームの「春の練習」のことを昔から「スプリング・キャンプ」と呼んでいるから、「キャンプ」とは「合宿練習」のことなのだ、と信じ込むのは、言葉は悪いが、ただの猿知恵である。

 欽ちゃんの素直な発想は、もちろんキャンプだけに止まらない。チームには女性選手を入団させた。「なんで女性の野球選手がいないの? 女性が入るほうが、男だけでやるより、ずっと楽しいでしょ」というわけだ。
 都市対抗野球の全国大会(東京ドーム)への出場を目指すらしいが、女性選手では実力的に無理では・・・という懸念に対しては、「野球で一番面白いのは逆転ですからね。女性投手もほしい。相手に先制点を奪われたら、さあ、逆転だって、盛りあがるじゃないですか」と、ニコニコ笑う。

 もっと凄いのは、都市対抗を目指す「アマチュア・チーム」なのに、ヘッドコーチに元ジャイアンツの鹿取義隆さん、主力打者として元ブルーウェーブの副島孔太選手が加わり、さらに多くのプロ野球OBや現役プロ野球選手が応援や指導に名乗りをあげていることだ。アマチュア規定違反では? と訊くと、欽ちゃんは首を傾げてこういった。
 「プロって、お客さんを呼べる人のことでしょ。アマチュアって、お客さんを呼べない人のことですよね。その区別は、お客さんが決めるのであって、お客さん以外の誰が決めるものでもないはずですよね・・・」

 ここに至って「欽ちゃん球団」は、意図的か否かはさておき、プロ野球界のどんな新しい動きよりも斬新な意味を有する「革命的集団」となりうるように思えるのである。
 昨年一気に噴出した日本球界の諸問題。その根源にはプロとアマの対立がある。どんな組織も、爛熟し崩壊するのは「内部」からであり、それが復活し蘇るのは「外部」の力が働いたときである。その意味で「欽ちゃん球団」は侮れない。彼は「赤子の心」を失ってないのだから。

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