コラム「スポーツ編」
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掲載日2007-02-19

この短い原稿は、かつてわずか3号で廃刊となったスポーツ情報誌『スポーツ・ゾーン』に「玉木正之のタックル・トーク」と題して連載したコラムのなかの1本です。コンピュータのなかを整理していたら出てきたのですが、そういえば、このときの3本分の原稿料は未払いでまだもらってないことも思い出しました。マァ、人生、いろんな事がありますわな・・・というわけで“蔵出し”します。

「水泳ニッポン」は復活するのか?

 かつて日本の水泳界は世界一だった。
 昭和初期から終戦直後までは、日本人スイマーが世界新記録を連発。1932年のロサンゼルス五輪や1936年のベルリン五輪では多くのメダルを獲得し、競泳は「水泳ニッポンのお家芸」とまでいわれた。

 それは軍隊式の猛特訓の成果だった。
 戦前の日本のスポーツ界では、練習における猛特訓が常識とされ、その結果、身体を壊すスポーツマンも多く出た。そんななかで、ごく少数の頭抜けた体力に恵まれたスポーツマンか、ごくごく少数の適当にサボることが巧みだったインサイドワークに秀でたスポーツマンしか、世界レベルに到達することができなかった。

 しかし、水中で重力の影響を受けない水泳は、いくら猛特訓を行っても身体を壊すことがなく、数多くの世界レベルのスイマーを輩出することができた。
 その後、戦後の復興が成果を見せ始めた昭和30年代から、日本の水泳界は低迷しはじめる。以下に引用する文章は、昭和39年の東京オリンピック直後の池田弥三郎氏(国文学者・慶大教授)の文章である。

 《日本のスポーツが、ことにはなばなしかった水泳などが、今まったくだめになってしまったのは(略)古きを失い、新しきを手にしていない、そういう段階での悲劇ではないか、と思う。つまり、日本の水泳陣の総くずれは、戦前の日本が否定され、「民主的」日本がまだ出来上がらない、今日の日本自身の混乱、低迷の、まことに端的な現われなのである。(略)日本の水泳がだめになったのは、激しい鍛錬を失い、さりとてほんとうにドライな、合理的な指導と運営がまだ確立されていない谷間の悲劇のような気がする》(『世界文化社版 東京オリンピック』昭和39年11月刊より)

 約40年前に書かれたこの文章は、いま読み直しても古さを感じない。
 最近開催されたバルセロナの世界水泳選手権の結果からは、過去の長い低迷から抜け出したかのようにも見えたが、北島の世界新記録による金メダルはあったものの、競泳が日本の「お家芸」と呼べるまでの「復活」を果たしたとはいえなかった。
 ということは、いまも《日本自身の混乱、低迷》が続いているということだろうか・・・?

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