コラム「スポーツ編」
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掲載日2009-06-03

この原稿は毎日新聞朝刊スポーツ面のコラム『金曜カフェ』(2009年5月15日付)に書いたもので、脳卒中で倒れてから約1か月、復帰後最初に書いた記念すべきものです。読者の皆さんには関係ないでしょうし、新聞社の担当者も小生の事情は知らなかったようです(笑)が、小生に思い出に“蔵出し”しておきます。

開発と規制の狭間で

 オーストラリアで開催されていた日豪対抗水泳男子200m背泳で、19歳の入江陵介選手が世界記録を1秒80も更新する1分52秒86の見事な記録で優勝した。

 が、この快挙はまだ「世界新記録」として公認されていないという。彼の使用した新しい水着が、まだ認められていないからだ。

 今年の3月14日、国際水泳連盟(FINA)は水着に関する新規則を発表。浮力や厚さ(1ミリ以下)などを規制し、そのルール内の水着しか使用が認められないことになった。

 そこへ入江選手が使用した水着など、多くの新作水着が世界中から持ち込まれ、いま審査中で(まさか新記録が取り消されることはないだろうが)公認されるのは1か月以上先のことになるらしい。

(と書いたのだが、のちの発表では入江選手の水着は公認されず、記録も認められなかった。その間の事情については他の雑誌に書いたので、後日“蔵出し”します。)

 そこで思い出されるのは、自動車レースのF1とインディカー・レースの違いだ。

 大雑把な指摘で申し訳ないが、F1はエンジンやボディに一定の規定が設けられているだけで、あとは各チームに設計や製作がまかされているため、豊富な資金力(開発力)のある有力チームが強くなる(そんな有力チームに実力あるドライバーも集まる)。

 一方インディカーの場合は、原則的に同一のエンジン、同一のボディを使用するため、ドライバーの技量が勝敗を左右する大きなポイントとなる。

 一見インディカーのほうが「公平」に思えるが、新しい自動車の開発(サスペンションやブレーキやギアボックス等の新技術)に寄与するという点ではF1方式が優っている。

 水泳の水着の場合もインディカー方式が公平で平等のように思えるが、最先端技術を封じるようなことにならないよう、ルールの統一には万全の注意を払ってほしいものだ。

 スポーツとは人間のあらゆる可能性を発掘するものであり、それはアスリート(競技者)だけでなく、あらゆる人々の未来に寄与するもののはずだから。

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