コラム「スポーツ編」
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掲載日2005-11-28

これは、11月10日付『河北新報』の文化面に掲載された原稿です。“蔵出し”としては少々早いのですが、大勢の人の目に触れる機会の少ない地方紙への特別寄稿でしたので、ここに公開させていただきます。

イーグルス1年目をどう総括する?

 東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生して1年目のシーズンが幕を閉じた。
 最下位に終わったチームの成績、シーズン途中でのゼネラル・マネージャーの降格やコーチの入れ替え、そしてシーズン後の田尾監督の1年かぎりでの更迭と野村新監督の就任。さらに楽天グループのTBS株買収による「野球協約違反」騒動・・・と、昨年秋から世の中の話題を独占し続けた球団は、いまもまだ落ち着く気配を見せない。

 その総括と2年目以降に向けての期待は、28年ぶりにプロ野球チームの本拠地都市となった仙台市民や、チーム名に冠された東北地方のファンの方々におまかせするとして、ここでは、その総括や期待の前提となる考え方を記しておきたい。

 史上初のストライキにまで至った昨年、多くの人々がプロ野球に関する諸問題を考えるうえでのキイワードとなったのは「スポーツ文化」と「地域密着」という二つの言葉だった。

 しかしその2点が、プロ野球の未来にとって重要なこととの認識はあっても、それが真にどのような意味を持つのか、ということに関してはまだ曖昧な面があるように思える。

 まず「文化」という言葉だが、それは明治時代の文明開化で輸入された「カルチャー」(culture)という言葉の訳語である。
 カルチャーという言葉は「耕す」(cultivate)という言葉の名詞形で、語頭に「土」を意味する「アグリ」(agri)が付けば「農業」(agriculture)を意味することからもわかるように、本来は「みんなで育て実らせた作物」という意味なのだ。

 一方「文化」は、「武化」の反対語で、支配者や為政者が武力によらずに法律や教育によって人々を治めることを意味する。つまり「みんなでつくるカルチャー」という言葉を「上から与えられる文化」という言葉に翻訳(誤訳?)してしまったのだ。

「文化の日」に政府が勲章を授与するのは言葉の意味通りの行為といえるのだが、「スポーツ文化」という言葉は、明らかに「カルチャー」の訳語として用いられていることに留意したい。すなわち、「みんなでスポーツ(クラブ)を育て実らせ」てこそ「スポーツ文化」といえるのである。

 そのときの「みんな」とは「地域社会に暮らす人々」であり、「地域密着」とは地域住民が「スポーツ文化」を実らせ育てることに「参加」することといえる。
 その点で、日本のプロ野球は、球団(スポーツクラブ)を所有する会社が、観客(ファン)を楽しませ喜ばせるという「上」からの企業文化としての活動しか行ってこなかった。

 そのやり方が破綻し、経営危機に陥った球団が生じ、昨年の「1リーグ化騒動」に発展。それに反対する大多数のファンの声に後押しされ、2リーグ制維持のため新規参入した球団がイーグルスだった。

 仙台を本拠地としたイーグルスは、当然、過去のプロ野球のやり方とは異なる「地域密着」を唱え、球界「改革」のトップランナーとなることが期待された。シーズン前からあまり期待されなかった成績以上に、それがイーグルスの存在価値だったはずだが・・・。

 その評価は、先に書いたとおり「地域住民のみなさん」に譲ることにするが、漏れ聞くところによると、多数の観客動員と宮城県などの協力を得た楽天イーグルスは、今シーズン早くも黒字となる見通しだという。

 が、これはおかしい。もしも黒字になるなら、「地域密着のスポーツ文化」として球団名から企業名は削除するべきだろう。また、企業名を冠し続けたいのなら、球団に対してそれ相応の数億〜数十億円の「ネーミングライツ」を支払うべきだとわたしは思う。はたして「地元のみなさん」はどう考える?

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