コラム「スポーツ編」
HOMEへ戻る
 
表示文字サイズ選択:
標準
拡大
掲載日2007-12-26

サッカー日本代表チーム岡田監督就任記念の“蔵出し”第2弾です。まったく残念なことに今は廃刊となってしまったスポーツ雑誌『スポーツ・ヤァ』(2006年6月のワールドカップ・ドイツ大会開催時の特別号)で5回に渡って行った岡田武史氏と連続対談第2回。日本代表がオーストラリアに大逆転負けを喫し、クロアチアにも勝てた試合を引き分けてしまい、グループリーグはブラジル戦を残すのみとなった時点での対談です。

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談
第2回「世界のランクBからAへ昇るには…」

玉木 勝てる試合を2試合連続して逃した、と中田英寿が試合後のインタヴューでいってましたが……。

岡田 Fグループではブラジルが図抜けていて、あとの日本、クロアチア、オーストラリアの3か国は決勝進出の可能性がまったく同じ3分の1ずつあると、僕は大会が始まる前から思っていました。だから、勝てる可能性のある2つの相手に、勝てる試合をしながら、残念ながら勝てなかった、といえますね。

玉木 本当に残念な2試合でした。

岡田 試合展開としては、オーストラリア戦よりもクロアチア戦のほうが、とくにそういえると思います。というのは、クロアチアのゴールが遠かった。川口がスルナのPKを見事に止めたけど、ほかにもいっぱいあったチャンスをクロアチアはことごとくはずしてくれた。こういう試合はサッカーには時々あるもので、そういうときは、相手のゴールは絶対にといっていいほど入らないものなんです。

玉木 ハーフタイムのテレビの解説で、岡田さんは「神様が日本についてる」といわれましたが、それは別に冗談でいわれた言葉ではなかったのですね。

岡田 そう。それもサッカーの試合のひとつの特徴とでもいうか、サッカーには、往々にして起こりうる展開なんです。だから日本は1点を取ればよかった。けど、その1点が取れなかった。

玉木 後半5分に加地の見事なセンタリングがあって、柳沢が脚をボールに合わせればいいだけだったのにはずしてしまった。32分には玉田の突破もありました。が、どっちも最後はうまくヒットしなかった。

岡田 その直後、クロアチアがニコ・クラニチャルをベンチに下げたでしょ。その前までになんとか得点がほしかった。後半、彼の動きは悪かったからね。

玉木 1点が取れなかった、というのは追加点と勝ち越し点の違いがありますが、オーストラリア戦も同じでした。

岡田 またフォワード論になってしまうけれど、ストライカーというものの存在の有無が、やっぱりサッカーでは大きな差となって結果に現れます。FIFAのランキングではなく、現在の世界のサッカーを国別にグループ分けすると、A〜Dの4段階に分けることができる。Dランクはフィリピンとかインドとか、それこそW杯出場にはほど遠い国々。Cランクはシンガポールとかオマーンとか、サッカーに力を入れはじめたけれど、W杯出場には至らない国々。そしてBランクは日本や韓国、それにオーストラリアやクロアチアなど、W杯には出場しても、優勝を狙うというわけにはいかない国々。そしてAランクは、ブラジル、イングランド、アルゼンチン、イタリア、フランス…といった国々。オランダやチェコも入れてもいいかな。こうして分けたときに、AとBの違いというのは、やっぱりストライカーの違いということが言えると思いますよ。

玉木 得点をなかなか入れられないことを「決定力不足」という言葉で表すことが多いのですが、それ以上に、日本のサッカーは、ストライカーが育たないことを問題にしなければなりませんね。

岡田 以前、イングランドのユースの練習を見たとき、選手がピッチに出てきて練習前にボールをちょっと蹴ったりするとき、日本ならパスをし合ったりドリブルしたり、ボールを取り合ったりするだけだけど、彼らは、向かい合って思い切り蹴り合ってシュートを打ち合ったりするんだな。一方がキーパーになって、一方が思い切りシュートを打つ。

玉木 そういう光景は、日本では見かけませんね。

岡田 要するに、日本でサッカーの巧い選手というと、フェイントとかトラップとかの巧い選手をいう場合が多いけど、それ以上にヨーロッパや南米の連中は、キックそのものを重視してる。つまり、キックの強さもふくめて思ったところへ思い通りに思い切り蹴ることができる、ということが根本的な意識としてあるんだな。

玉木 細かいテクニックの前に、まず、強く蹴ることだと。

岡田 そう。それに日本のサッカーで子供の頃から評価されて注目されたり、上に上がってくる選手というのは、監督や先生からいわれることをきちんとこなす、真面目な連中が多い。でも、ストライカーというのは、そうじゃないんだな。ボールが足もとに来たらドーンと蹴り込むのが一番の仕事なんだから、少々練習や生活態度がいい加減でも、あいつにボールが渡ればキックが凄いから何とかしてくれる、得点につながる…、いや、それ以上に、あいつは何をするかわからない、何を考えてるかわからない、けど、何かしてくれる、というような選手が、若い頃にスポイルされないような環境が必要だと思う。そもそも、何をするかわかるようなヤツでは、キックは止められてゴールは奪えないんだから。

玉木 そういう異能者というか、天才肌というか、スーパースターという以上にトリックスターというべき異端者であるというのがストライカーにとって欠かせない要素であるなら、それが出現しないのは、日本のサッカーという以上に、日本の社会に原因がありそうですね。

岡田 そう。だから日本のサッカーが、世界のBランクからAランクを目指すには、そうとう時間がかかるかもしれないな。

玉木 サッカー界だけじゃなく、一般の社会や企業のなかからも、そういうワケのわからない連中が出てくるようになるのを待つのでなく、サッカー界が率先して社会を牽引してほしいですけどね。

岡田 何を考えてるかわからないヤツ、ワケのわからないヤツってのは、使い続けるのがけっこう難しいんだけどね(笑)。僕が久保を評価してるのは、いまいったようなワケのわからなさを持ってるからなんだけどね。インタヴューでも何しゃべってるのかわからないし(笑)。

玉木 やっぱりジーコは久保をはずさないほうがよかったかな。

岡田 いや、この前、いったでしょ。僕が監督なら、もっと早くはずしてたって。だってケガで動けないもの(苦笑)。

玉木 さて、勝てる試合を引き分けて勝ち点1の日本は、ブラジル戦を残すのみとなりました。岡田さんは、大会前から、クロアチアやオーストラリアよりもブラジルのほうがむしろ闘いやすいとおっしゃってましたが……。

岡田 ブラジルは、最前線へボールを放り込んで宮本と競り合わせるというような攻撃の仕方をしないからね。優れた個人技を中心にパスをつないだり、個人で突破を図ってくる。もちろん、総合力としての実力的にはブックメーカーの評価通り、大きな差があるけど、守備を徹底してコンパクトにする意識を強く持って、ボールを奪った瞬間とにかく速く攻める、ということをねばり強く繰り返せば、勝機も生まれると思いますよ。

玉木 サッカーは何が起こるかわからないということを信じてブラジル戦に期待しますが、クロアチア戦終了直後に、残念なことが一つありました。それは、観客席にいた日本人サポーターのなかで、なぜか大喜びしている若い女性たちがテレビの画像に映し出されたことです。クロアチアのサポーターが敗戦のように沈んでいたのに対して、勝てる試合を引き分けにしてしまった日本のサポーターが喜ぶとは、サッカーに対する一般の人々の理解がまだまだ…。

岡田 まだW杯出場も3回目だもの…。仕方ないですよ。

▲PAGE TOP
バックナンバー


蔵出し新着コラム

水着で「言い訳」をしたのは誰?

世界史のススメ

『玉木正之のスポーツジャーナリスト養成塾』夏期集中講座

Jack & Bettyは駅の前

五輪とは死ぬことと見つけたり

セールスマンの死

日本人野球選手のMLBへの流出が止まらない理由

深い衝撃

大学はスポーツを行う場ではない。体育会系運動部は解体されるべきである。

スポーツニュースで刷り込まれる虚構 <森田浩之・著『スポーツニュースは恐い 刷り込まれる〈日本人〉』NHK出版生活人新書>

メディアのスポーツ支配にファンが叛旗

スポーツと体育は別物

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第5回(最終回)「W杯守備重視の傾向は今後も続く?」

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第4回 「ブラジルは何故ロナウドを使い続けた?」

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第3回 「個人のサッカーの差がこんなに大きかったとは…」

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第2回「世界のランクBからAへ昇るには…」

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談第1回「追加点を取るという国際的意識に欠けていた」

巨人の手を捻る

中日ドラゴンズ監督・落合博満の「確信」(加筆版)

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第3弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第2弾!

300万ヒット記念特集・蔵出しの蔵出しコラム第1弾!

「朝青龍問題」再考

大相撲の改革の契機に

“日本のサッカー”は“現代日本”を現す?

スポーツとは合理的なもののはずなのに……

世界陸上と日本のスポーツの未来

デデューの「復帰」に学ぶ「カムバック」に必要なもの

特待制度は「野球の問題」か?

学校はスポーツを行う場ではない!

動き出すか?球界の真の改革

東京オリンピック〜戦後日本のひとつの美しい到達点

「八百長vs出来山」の大一番〜大相撲に『八百長』は存在するのか?

日本スポーツ界における「室町時代」の終焉

「水泳ニッポン」は復活するのか?

スポーツはナショナリズムを超えることができるか?

「歴史の重み」による勝利は、いつまで続く?

スポーツ総合誌の相次ぐ「廃刊・休刊」に関して考えられる理由

廃刊の決まった『スポーツ・ヤァ!』をなんとか継続できないものか!?

日本の野球選手はなぜアメリカを目指すのか?

日本のプロ野球と北海道ファイターズに未来はあるか?

私の好きな「スポーツ映画」

スポーツへの熱狂を肯定する

東京・福岡「五輪招致」のナンセンス?

政治と格闘した宿命のチャンピオン〜モハメド・アリ

日本のスポーツ界は「中田の個人の意志」を前例に

「求む。新鋭ライター」〜玉木正之の「第5期スポーツ・ジャーナリスト養成塾夏期集中講座」開講のお知らせ

1個のボールが世界の人々を結ぶ

「型」のないジーコ・ジャパンは大丈夫?

社会はスポーツとともに

「日本サッカー青春時代」最後の闘い

スポーツは、学校(教育の場)で行われるべきか?

常識を貫いた男・野茂英雄(日本人ヒーロー/1995年大リーグ新人王獲得)

「玉木正之のスポーツ・ジャーナリスト養成塾第4期GW期集中講座」開講のお知らせ

最近のプロ野球は面白くなった!

人生に「アジャストメント」は可能か?

「栄光への架け橋だ!」は、五輪中継史上最高のアナウンスといえるかもしれない。

スポーツの「基本」とは「ヒーロー」になろうとすること?

2005年――「2004年の奇蹟」(選手会のスト成功)のあとに・・・

アジアシリーズ日韓決戦レポート『日本の野球はどのように進化したか?』

2005日本シリーズに見た「短い闘い」と「長い闘い」

イーグルス1年目をどう総括する?

スポーツとは経験するもの? 想像するもの?

阪神電鉄VS村上ファンド――正論はどっち?

高校野球の「教育」が「暴力」を生む

『スポーツ・ヤァ!玉木正之のスポーツ・ジャーナリスト実践塾』進塾希望者への筆記試験

ナニワの乱痴気

スポーツが開く未来社会

タイガースって、なんやねん 第10回「星野監督・阪神・プロ野球/それぞれの未来」

タイガースって、なんやねん 第9回「この先は、どんな時代になるんやねん?」

タイガースって、なんやねん 第8回「ミスター・タイガースはおらんのか?」

タイガースって、なんやねん 第7回「誰がホンマのファンやねん?」

タイガースって、なんやねん 第6回「関西は「豊か」やからアカンのか?」

タイガースって、なんやねん 第5回「星野さんは、コーチやなくて監督でっせ」

タイガースって、なんやねん 第4回「球団職員にも「プロの仕事」をさせまっせぇ」

タイガースって、なんやねん 第3回「星野監督は当たり前のことをする人なんや」

タイガースって、なんやねん 第2回「今年のトラにはGMがおりまっせ」

タイガースって、なんやねん 第1回「今年はバブルとちゃいまっせ」

「関西・甲子園・タイガース」=バラ色の未来――あるタクシードライバーの呟き

第V期スポーツジャーナリスト養成塾夏期特別集中講座・配布予定資料一覧

失われた「野球」を求めて――「楽天野球団」は「新球団」と呼べるのか?

浜スタから金網が消えた!

わたしが競馬にのめり込めない理由(わけ)

プロ野球ウルトラ記録クイズ

島田雅彦vs玉木正之 対談 『北朝鮮と闘い、何がどうなる?』

野球は、なんでこうなるの?

投手の真髄――PITCHING IN THE GROOVE

「球界第二次騒動」の行方は?

2005年日本スポーツ界展望〜「真の新時代」の到来に向けて

日本のスポーツの危機

野球は「学ぶもの」でなく、「慣れ親しむもの」

ライブドア堀江社長インタヴュー「落選から西武買収まで、すべて話します」

球団・選手「金まみれ」の甘えの構造

地域社会に根ざすスポーツ

新球団『東北楽天ゴールデンイーグルス』に望むこと

闘いはまだまだ続く

中日ドラゴンズ監督・落合博満の「確信」

奇蹟は起きた!

さようなら、背番号3

プロ野球ストライキと構造改革

「メディア規制法」とスポーツ・ジャーナリズム

黒船襲来。プロ野球維新のスタート!

パラリンピックを見よう! 日本代表選手を応援しよう!

アテネ大会でオリンピック休戦は実現するか?

「NO」といえるプロ野球

プロ野球選手が新リーグを創ってはどうか?

買収がダメなら新リーグ

「逆境こそ改革のチャンス!」

あの男にも「Xデー」は訪れる・・・

F1― それは究極の男の遊び

「戦争用語」ではなく「スポーツ用語」を

スポーツは国家のため?

阪神優勝で巨人一辺倒のプロ野球は変わりますか?

「高見」の論説に感じた居心地の悪さ

原稿でメシを食ったらアカンのか?

アメリカ・スポーツライティングの世界

<戦争とスポーツ>

長嶋野球の花道と日本球界の終焉

スポーツを知らない権力者にスポーツが支配される不幸

ニッポン・プロ野球の体質を改善する方法

草野進のプロ野球批評は何故に「革命的」なのか?

理性的佐瀬稔論

新庄剛志讃江――過剰な無意識

無精者の師匠、不肖の弟子を、不承不承語る

誰も知らないIOC

日本のスポーツ・メディア

Copyright (C) 2003-2008 tamakimasayuki.com. All Rights Reserved. Produced by 玉木正之HP制作委員会. ホームページ作成 bit.
『カメラータ・ディ・タマキ』HOMEへ戻る