コラム「スポーツ編」
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掲載日2004-06-28

この原稿は『スポーツ・ヤァ!』(角川書店刊)に現在も連載している『玉木正之のスポーツ文化発信所』に寄稿したものです(発行日は・・・1年くらい前でしょうか。いいかげんでスイマセン)。「近鉄オリックス合併問題」でまたまた暴言暴挙を繰り返している人物に関する原稿を“蔵出し”します。

あの男にも「Xデー」は訪れる・・・

 小生が尊敬しているある人物と、次のような会話をした。
「プロ野球界を牛耳っているあの人物は、いまだに元気だとはいえ、たしか75歳の高齢ですからね。いずれは寿命を迎えるでしょう」
「それは、そうだろうな」
「そのとき、日頃から批判を繰り返してきた私に対して、新聞や雑誌はコメントを求てくると思うんですよ。プロ野球界のドンが亡くなったことについてどう思うか?今後のプロ野球はどうなるか?といった具合に・・・」
「それは必ずあるだろうな」

「そのとき、『本当に嬉しい』とか『これで日本のプロ野球も正しい道を歩むきっかけをつかめる』というようなコメントを口にしていいものでしょうかね・・・?」
「う〜ん・・・・・・難しい問題だな」
「そうですよね。どんな人に対してでも、亡くなった方には哀悼の意を示したいし、冥福を祈るのが礼儀ですからね。けれど、あれだけ横暴を繰り返し、暴言を吐き、野球選手を馬鹿にし、野球界の未来に対する理念もなく、自分の利益しか考えないような人物に対しては、『心の底から嬉しい!』と、本音をいってしまいそうです。それに、じっさい強大な権力でプロ野球界を無茶苦茶にした人物ですからね。あの男がいなくなれば、日本の野球界も少しはマシな方向に歩み出せるでしょうから、『日本の社会にとっても素晴らしいことだ』といいたいところですよ。けど、死者に鞭打つようなことは、やはりいうべきではないというのが礼儀のようにも思えますし、抗議されたり、人格を疑われたりするかも・・・」

「でも、いいんじゃないの。いつものように君らしく、遠慮せず本当に思ってることをいえばいいよ。ま、なかには、死者に対して失礼だと非難する人もいるだろうし、そこまでのコメントは載せられないといって表現をやわらげるように求めるメディアもあるだろうけど、だからといって君が、『いろいろ問題はあったけど、プロ野球のために金も使って尽力もした』なんてコメントを出したら、それこそ、君の愛読者がガッカリしてしまうじゃないか」

「そんな馬鹿なコメントは、口が裂けてもいいませんよ。最近の中村ノリや星野監督に対する発言のひどさは、許し難いですからね。コミッショナーが彼を処罰しないのが不思議ですよ。まあ、コミッショナーなんてお飾りですから、期待はしていませんけどね。それに、あの人物は、松井(秀喜)選手のFA宣言に対しても、表では励ますような態度をとりながら、裏ではそれを阻止するために、かなり悪辣な動きをしたそうですからね。とにかく日本の野球界と日本の社会のためには、消えていただくことが最高の幸福であって、ホンのわずかでも評価できることなんか、ないですね」
「まあ、君が思ってることは、多くの人も思っていることだから、本来ならば死者に対しては冥福を祈るのが礼儀だろうけど、このときばかりは、礼儀を失しても、誰も抗議はしてこないだろう」

「なにしろ、選手組合の委員長の古田選手が、ほんのちょっと『ストライキ』という言葉を口にしただけで、『古田はファンに殺されるぞ』といった人物ですからね。そんな人物がいなくなれば、『みんなで万歳を叫びましょう』とコメントしたいくらいですよ」
「まあまあ、抑えて、抑えて。そこまではいいすぎだよ」
「はい。わかっています。けど、メディアもジャーナリストたちも、どうしてもっと、あの人物を批判しないんでしょう。スポーツのことだから笑って済ませられると思ってるのか。それとも、やはり彼の持っている権力が怖いのか。そういえば、あの人物について書いた魚住昭さんの名著『メディアと権力』はノンフィクションの大傑作なのに、新聞は一切取りあげず、何の賞もとれませんでした。作家連中は、あの人物が牛耳ってる新聞社の文学賞がほしいのか・・・。ともかく、みんなが声をあげなさすぎますよ。あの人物の暴言を楽しんでいるメディアまである。プロ野球選手が、カネでホッペタを叩かれて奴隷のように扱われているというのに・・・」

「それはともかく、君は、何歳になった?」
「五〇になりましたが・・・」
「そうか・・・。いまから二〇年経ったら、あいつは95。君は70か・・・。ひょっとしたら、あいつのほうが君より長生きするかもしれんなあ・・・」
「そんなあ・・・」
「ま、それくらいの怪物であることだけは確かだから、もうすぐいなくなるなんて考えず、日々の仕事に励みたまえ」
「それって励ましの言葉ですかあ・・・」

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