コラム「スポーツ編」
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掲載日2008-01-23

サッカー日本代表チームに岡田監督就任!この岡田さんとの対談は、いまでは(まったく残念なことに!)廃刊となってしまったスポーツ雑誌『スポーツ・ヤァ』が2006年6月のワールドカップ・ドイツ大会開催時に週刊で発売した特別号で行ったものです。その5回連続で行った対談の4回目、決勝目前のときに語り合ったものを“蔵出し”します。ここには岡ちゃんのサッカー代表チームとワールドカップに対する考え方が…。

岡田vs玉木 ドイツW杯特別対談
第4回「ブラジルは何故ロナウドを使い続けた?」

玉木 いよいよW杯も決勝目前まで進みましたが、今大会の全体的な印象について、岡田さんはどんな感想をお持ちですか?

岡田 やっぱり前回の日韓大会と違って、ヨーロッパのリーグ戦が幕を閉じたあとに休養期間があったことが大きかった。だからヨーロッパで活躍してる一流選手のコンディションが良くて、その結果、実力あるチームが順当に勝ちあがってきたよね。それと決勝トーナメントが始まって、多くのチームがグループリーグのときとはがらりと闘い方を変えてきたことには驚いたな。

玉木 負けたくない…という必死さがテレビ画面からも伝わってきました。

岡田 その気持ちはある意味で当然なんだけど、戦術としてもワントップにするチームが増えて、「負けたくない」という闘い方に変わったよね。グループリーグで見られたアグレッシヴな展開が影を潜めてしまった。まあ、それだけ厳しい相手との勝負が続いたということなんだろうけど…。

玉木 そんななかで前評判のあまり高くなかった開催国ドイツや、自国リーグの八百長問題で大揺れのイタリアが、期待以上の結果を残しましたが……。

岡田 期待以上というよりも、その2か国の結果は、納得できるという印象ですね。もともと地力のある国だし、大会開会前の僕の優勝予想はイタリアだったから。

玉木 イタリア優勝予想の根拠は?

岡田 いや、それは、まぁ、友人や知人が多いというだけなんだけど(笑)、結果的に期待以上といえるのは、フランスとポルトガルでしょう。エクアドルやガーナもよくやったとはいえるけど、試合内容という点でも、フランスとポルトガルの闘いぶりは見事だったよね。

玉木 準々決勝でのフランスvsブラジル戦を見ていて、当然のこととはいえ、なるほどサッカーとはチームプレイが大切なんだということを改めて痛感しました。

岡田 今大会で勝ちあがってきたチームは、どれも選手の役割分担がはっきりと見えるよね。イタリアは堅い守りから奪ったボールをガットゥーゾからピルロ、そしてペロッタとまわすなかで全体を押しあげる。フランスは、ビエラが前のスペースを使い、マケレレがドリブル突破、ジダンからアンリへのスルーパス。ドイツもバラックを起点にボロウスキやシュバインシュタイガーが押しあげ、ここぞというときに左サイドバックのラームが攻撃参加。ポルトガルはフィーゴを軸に…。

玉木 そういう役割分担が明確な動きは、当然相手チームにも読まれますよね。

岡田 それを機能させたチームが勝ちあがった、ということですよ。そういう動きを明確に意識した練習の積み重ねのうえに、試合での意思統一の徹底とコミュニケーションが巧くいったということでしょうね。

玉木 ブラジルは、そういう役割分担やコミュニケーションが破綻した…?

岡田 まぁ、期待はずれでしたね。終わってみればロナウドに記録を作らせるための大会だったのかな…というのが正直な感想です。現場の事情は知らないし、ブラジル国民の意識も僕らとは違うんだろうけど、あれだけ動きの悪いロナウドを使い続けたのは理解できなかった。それに役割分担という点では、ドア・ボーイがいなかった。

玉木 ドア・ボーイ?

岡田 どの選手も自分でボールを持ってドアを開けようとするばかりで、ボールを持っている選手の前でドアを開けてやろうとする選手がいなかった。それでは、どんなに個人的に高い技術を持っていても、やっぱり無理があるし、せっかくの高い技術を十分生かすこともできません。

玉木 いまのドア・ボーイの比喩は、オシムのジーコ・ジャパン批判にも通じますね。

岡田 オシムが何かいったの?

玉木 日本代表に選ばれた選手のメンバーは、「水を運ぶ選手がいない」と…。

岡田 そういうことですね。結局は、11人でゴールを獲るために、自分は、いま、何をしなければならないか、という意識の徹底なんだけど…。

玉木 ブラジル以外で期待はずれの国は?

岡田 アルゼンチンかな…。ドイツとの準々決勝で1点を先取したまでは、グループリーグでの闘いぶりもふくめて素晴らしいと思った。ドイツの必死のプレスも適当にいなして、いろんな攻撃パターンを見せてくれたしね。けど、リケルメをベンチに下げてから、普通のチームになってしまった。

玉木 リケルメを下げたのは、守りを徹底しようとしたのでしょうか?

岡田 まぁ、そうなんだろうけど、アルゼンチンは良くも悪くもリケルメのチームで、リケルメ自身もさほどの選手ではないけど中心的な役割をまかされるなかで彼のプレイも生きていた。それが、リケルメがいなくなった途端、まったく特徴のないチームになってしまった。

玉木 期待はずれ…というなかには、もちろんアジアの代表国も入りますよね。

岡田 そう…日本もふくめて、やっぱり期待はずれだった。それに、韓国vsスイスの試合を見て、僕は考え込んでしまったんだけど、両国の選手のあいだには、フィジカル面でもメンタル面でも、まったく差がなかったよね。技術的にもほとんど差はないし、スイスには突出した選手もいない。ところが判断力の差というか…。相手に攻められてボールにアタックするときに、危ないと思ったらクリヤーし、いけると思ったらパスをつないで逆襲に転じるわけだけど、韓国の選手は逆襲のパスを2〜3度カットされたりすると、安全策をとろうとするのか、いけると思える場合でもクリヤーするようになった。つまり、クリヤーか逆襲かの判断基準が安全な方へと変化したんだ。スイスの選手は、何度失敗しても、その判断基準自体は動かさなかったのに…。

玉木 それは日本の選手も同じですね。失敗のあとは、安全策に変わる…。

岡田 そう。サッカーという試合の流れのなかで、チャレンジするか安全策をとるか、その判断基準は常に変わらないはずなんだ。ところが、イスラム諸国はそうでもないと思うんだけど、東アジアの国の選手は失敗のあとに判断基準を変えてしまう。

玉木 それは教育的な問題かも…。失敗を監督(先生)から何度か叱られると、叱られないプレイを選択するようになる…。

岡田 指導に上下関係の意識が生じるなかで、選手の判断に狂いが出ているなら、我々指導者は指導方法や指導するときの言葉を考え直さなければ…。その根底にあるのが教育制度なのか、それとも儒教などの影響なのか、それはわからないけど…。

玉木 ちょっと意味は違うかもしれませんが、プロ野球の選手がプロとして信じられないようなとんでもない悪送球といったエラーをしてしまうときは、送球する相手が大学や高校時代の先輩である場合が多い、という話を田尾安志さん(前楽天監督)から聞いたことがあります。怖い先輩の顔が目に入った途端、筋肉が緊張する…。

岡田 スポーツのプレイがスポーツ以外の意識によって妨げられては、力も技術も発揮できないからね。

玉木 イングランドのルーニーなんかにはそんな余計な意識はありませんよね。

岡田 (苦笑)イングランドはオーウェンのケガやPK戦で不運だったけど、まぁ、期待通りの活躍といえるかな。

玉木 最後にカップを手にするのは?

岡田 予想なんかしない。決勝戦を見ればわかるんだから(笑)。

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