コラム「スポーツ編」
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掲載日2008-03-05

この原稿は昨年(07年)11月16日付毎日新聞朝刊『論点』のコーナーに書いたもので、他に、滝鼻卓雄(巨人軍オーナー)、テリー伊藤(演出家)の両氏と並び掲載されました。テーマは「プロ野球・巨人を診断する」というものでしたが、まったく異なる原稿が3本並んだわけです(笑)。滝鼻オーナーの意見は「球界の主役に期待を/観客数、テレビ視聴率ともに回復基調」というもの。テリー伊藤さんの意見は「ヒーロー像変わった/巨人も身近な共感呼べる選手で勝負を」というものでした。皆さんどう思われますか?というわけで“蔵出し”します。

メディアのスポーツ支配にファンが叛旗

 プロ野球ファンの7割以上が巨人ファン。TV視聴率は常に20パーセント前後。かつて、そんな時代があった。理由は明らかで、巨人の親会社が巨大メディアであったこと。その親会社が優秀な選手の獲得に莫大な資金を投じたこと。この2点である。

 全国ネットのテレビ中継が他球団の試合を無視して巨人戦ばかりを放送し、日本一の発行部数を誇る全国紙が「巨人が勝たなければプロ野球はつまらない」という意見を流し続けた結果、巨人ファンは全国に増え、それに反発した野球ファンも「アンチ巨人も巨人ファン」というレトリックの中に取り込まれた。

 親会社の巨大メディアがそれほど必死に巨人のPRに務めたのは、野球を利用した販売戦略に出遅れたからである。朝日の高校野球、毎日の都市対抗野球とセンバツ。その後塵を拝した読売グループは、職業野球の宣伝、とりわけ巨人人気の獲得に力を注いだ。そして他球団が親会社の税金対策として存在した時代、読売の戦略は功を奏した。が、時代は変化した。

 他球団の優秀な選手を次々と引き抜き、ドラフト制度の欠陥をついて有力新人選手を獲得し、FA制度を導入し、ドラフト制度を改悪し…なんとか「常勝巨人」を維持しようとしたが、そのあまりに恣意的な企みを見透かしたファンは「NO!」の声をあげた。その頂点が三年前の選手会によるストライキだった。

 そして時代は地域社会の支持を得る球団運営が主流となり、メディアによる「全国制覇」に興じるファンは激減した。にもかかわらず、なおも他球団の有力選手をFAで獲得し、何が何でも勝利をめざすというやり方は、時代錯誤の足掻きでしかない。

 次代を担う素晴らしいチームとして巨人を再興させるのは簡単なことである。フランチャイズを地方へ移し、地域社会との地道な交流を展開すればいい(それは都心では無理だろう)。が、あくまでも親会社の戦略に従い「東京発の全国制覇」を求めるなら、現在の地滑りを止めるのは不可能だろう。

 ということは、これは巨人やプロ野球に限った問題でなく、あらゆるマス・メディアとスポーツの関係に及ぶ問題といえる。亀田問題、高校野球の裏金、大相撲、マラソン、駅伝…。マス・メディアがイベントを主催したりチームを所有したり選手を支配することが、はたして真に健全な日本のスポーツ文化の育成と発展につながるのかどうか。そこが最重要課題のはずだ。

 スポーツとはメディアの戦略とは無縁に、多くの人々の支持と支援によって創り出されるべき文化であり、そのような組織やシステムが構築され、豊かな社会が築かれるよう、メディアはジャーナリズムとしての機能を言論で果たすのが本義である。

 巨人(スポーツ)はメディアにとって必要な存在かもしれないが、メディアの支配する巨人(スポーツ)は不要である。野球ファンは、そういう結論に達した。それが巨人人気凋落の主因に違いない。

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