コラム「スポーツ編」
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掲載日2008-09-24
この原稿は、毎日新聞の連載コラム『金曜カフェ』(7月25日付朝刊)に寄稿したものです。WBCがどうのこうのと騒がれてる昨今、少しだけ加筆して蔵出しします。

野茂の功績と日本球界の課題

 メジャー復帰に挑戦し続けていた野茂英雄投手が、ついに引退を表明した。

 日本人初のメジャー新人王、日米通算2百勝、ナショナル・アメリカン両リーグでのノーヒットノーラン…等々、彼の活躍は実に見事なものだった。

 が、そんな記録以上に評価すべきは、常に高いレベルに挑戦するスポーツマンの姿勢を示してくれたこと、そして日本野球のレベルの高さを実証してくれたことだ。

 今では忘れた人も多いだろうが、野茂がアメリカに渡る意志を表明したとき(94年秋)、多くのファンも評論家も、こぞって囂々(ごうごう)たる非難を浴びせたものだった。

 野茂の行動は自分勝手であり、日本球界や近鉄球団への裏切りであり、「半年で尻尾を巻いて帰ってくる」とまで断じた評論家もいた。

 前年(93年)にJリーグが開幕し、プロ野球の危機が叫ばれていたことを差し引いても、それらの非難は、高いレベルに挑戦するというスポーツマンの本分を否定し、バブル経済の余韻が残っていた島国の「井の中」の世界を肯定するものにほかならなかった。

 そんな偏狭な考えを打ち破り、日本の野球人と野球ファンの視野を大きく広げてくれたのが野茂だった。

 それは、アマチュア時代にオリンピックなどの国際大会に数多く出場し、アメリカやキューバなどのメジャー級の選手と数多く対戦した彼の自信に裏打ちされた行為でもあっただろう。

 が、当時の日本球界でタブー視されていた複数年契約と代理人の存在が認められていたなら、彼は日本に留まっていたともいう。

 つまるところ日本球界は、選手の利益よりも球団(親会社)の利益を優先させて貴重な人材を失ったのだ。その結果メジャーに挑む選手が次々と誕生したのだから、次は日本球界が親会社から自立し、メジャーと肩を並べるプロの組織への再編を目指す番だろう。

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